サスカチェワン(その他表記)Saskatchewan

翻訳|Saskatchewan

改訂新版 世界大百科事典 「サスカチェワン」の意味・わかりやすい解説

サスカチェワン[州]
Saskatchewan

カナダ10州のほぼ中央に位置する州。面積65万1900km2。人口97万(2006)。州都および最大都市はレジャイナ。ドイツ系,ウクライナ系など中・東欧からの移民が人口の約3分の1を占め,また他州に比べインディアン人口の比率も高い。州の北部3分の1はカナダ楯状地に属するが,南部3分の2は大草原で平たんである。しかし,ノース・サスカチェワン,サウス・サスカチェワンの両大河が大草原を蛇行して流れ,変化に富む景観を提供している。サスカチェワンとはインディアンの語で〈迅速に流れる川〉を意味する。

 アシニボイン族,クリー族などのインディアンがバッファロー猟に従事していたこの地に初めて入った西欧人は,イギリスのハドソン湾会社が派遣したH.ケルシーで,17世紀末のことであった。しかし本格的な移住の開始は,1882年北西部騎馬警察の本部が無人の地に近いレジャイナに設置され,翌年そこをカナダ・パシフィック鉄道が通過するのを待たなくてはならなかった。85年L.リエルの指導する原住民による抵抗運動は,南部サスカチェワンを舞台としたが敗北を喫し,リエルはレジャイナで処刑される。1905年州としてカナダに編入。20年代以降は,小麦農民を支持勢力とする政治改革運動で知られる。44年には協同連邦党政権を掌握したが,これはイギリス連邦における初の社会主義政権の誕生であった。

 経済は伝統ある農業が依然として他部門を圧しており,なかでは小麦生産が際だっている。近年目覚ましい発達を遂げつつあるのが鉱業部門で,苛性カリ石油が主要産物である。この二つの第1次部門だけで州の総生産高の63%を占める。工業部門は約1割強の生産高をもつのみで,食品加工を中心とする。レジャイナ,州第2の大都市サスカトゥーンは農産物集散地として知られる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サスカチェワン」の意味・わかりやすい解説

サスカチェワン
さすかちぇわん
Saskatchewan

カナダ中南部の州。平原三州の中央に位置。面積58万6561.35平方キロメートル、人口97万8933(2001)。東西450~630キロメートル、南北1200キロメートル、南側は北緯49度線でアメリカ合衆国と、北側は北緯60度線でノースウェスト・テリトリーズと境されている。州都リジャイナ。北米大陸のプレーリー北縁に位置し、自然植生は南部のプレーリーの草原、北部の針葉樹林、中間部の移行帯の混合林におおよそ3分割することができる。気候は大陸性で、南部ほど乾燥している。月平均気温は1月で零下15~零下25℃、7月で16~20℃、年降水量は南部で300~400ミリメートル、北部で400~500ミリメートルである。人口は南部に集中している。春小麦を中心とした世界有数の農業地帯に属し、カナダ小麦の3分の2を産出しており、州第二の都市サスカトゥーンがその大集散地となっている。ほかに、エンバク、大麦、ライムギを産し、酪農や家畜飼育も行われ、大規模な農業経営で高度に機械化されているのが特色である。また、プレーリー地区での石油、天然ガスの発見に伴い、アルバータ州に次ぐ石油産地としても注目されている。南東端のカリ鉱床は世界最大である。そのほか銅、亜鉛、アルミニウム、ウラニウムなども産し、これら豊富な鉱産資源を利用した工業や石油精製、石油化学などの工業も発達しつつある。

 17世紀末、ハドソン湾会社が毛皮の交易地を設けたのが始まりで、永住集落は1774年建設のカンバーランド・ハウスといわれる。1869年までハドソン湾会社が支配、70年にカナダ自治領の一部となり、カナダ連邦に加盟したのは1905年である。他州に比べてインディアン人口の比率が高く、州名は、インディアンのことばで「速く流れる水」の意の同名の川が州を貫流することに由来。

[山下脩二]

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