イタリアの数学者。本職はイエズス会の聖職者であったが,1699年からは終生パビア大学で数学の講座をもった。ユークリッドの平行線公準に関心をもち,《証明的論理学Logica demonstrativa》(1697)を著して,まず定義の本質を究明し,続いて主著《あらゆる欠点が除かれたユークリッドEuclides ob omni naevo vindicatus》(1733)において,平行線公準なしに証明できるユークリッドの最初の26個の定理および平行線公準を否定した仮定から生ずる体系を展開し,それによって平行線公準を証明しようとした。もちろんこの目的は達成されていないが,そこには非ユークリッド幾何学が無意識的に展開されている。このようなわけで,彼は非ユークリッド幾何学発見の先駆者とみなされている。
執筆者:中岡 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
イタリアの数学者、イエズス派の神父。非ユークリッド幾何学形成の先駆者である。著書『証明の論理学』Logica demonstrativa(1697)でその推論法を正確にしたのち、『すべての欠点を取り除いたユークリッド原論』Euclides ab omni naevo vindicatus(1733)において、当時の難問であった「ユークリッドの平行線公準の証明」に取り組んだ。一つの三角形において内角の和が(イ)2直角、(ロ)2直角より小、(ハ)2直角より大ならば、すべての三角形において、それぞれ対応して(イ)、(ロ)、(ハ)が成り立つことを証明したが、彼の論理ではその意に反して、(ロ)、(ハ)の場合を否定することができず、ここに明らかに非ユークリッド幾何学への発展の中途段階がみられる。
[中村幸四郎]
出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報
…この間に第5公準は〈直線外の1点を通ってその直線に平行な直線はただ1本である〉とか〈三角形の内角の和は2直角である〉という命題に同値であることがわかったが,本来の目的は達せられなかった。これらのうち,とくに注目すべきものに,背理法によって証明しようとして,第5公準が成立しないとの仮定に立って,それに伴う種々の結果を導き出したサッケリG.Saccheri(1667‐1733)やA.M.ルジャンドルの研究がある。しかしユークリッド幾何学の先験性を信ずるあまり,彼らは第5公準を否定しうる命題とは考えることができなかった。…
…この間に第5公準は〈直線外の1点を通ってその直線に平行な直線はただ1本である〉とか〈三角形の内角の和は2直角である〉という命題に同値であることがわかったが,本来の目的は達せられなかった。これらのうち,とくに注目すべきものに,背理法によって証明しようとして,第5公準が成立しないとの仮定に立って,それに伴う種々の結果を導き出したサッケリG.Saccheri(1667‐1733)やA.M.ルジャンドルの研究がある。しかしユークリッド幾何学の先験性を信ずるあまり,彼らは第5公準を否定しうる命題とは考えることができなかった。…
…そして,第5公準は平行線の公理や〈三角形の内角の和は2直角に等しい〉という命題と同値であることが認識されたのであるが,第5公準を証明しようという研究はすべて失敗した。この中にあって,G.サッケリは背理法による証明を試み,平行線公理が成立しないとの仮定のうえに立って,それに伴う種々の結果を導き先駆的業績をあげたが,彼もユークリッド幾何学は唯一の真理であるという思想から完全に脱却できず,非ユークリッド幾何学の発見者になれなかった。 19世紀になると,〈第5公準は成り立たなくてもよいのではないか〉〈直線外の1点を通ってその直線に平行な直線は二つあると仮定してもよいのではないか〉と考えられ始めた。…
※「サッケリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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