翻訳|samizdat
検閲を経ないソ連邦時代の地下出版物のこと。ロシア語のサム(自身)とイズダート(出版所の略)を組み合わせた新造語で,1960年代後半から用いられるようになった。帝政時代に革命的な詩などが手書きでひろまったのと同様,小部数のタイプ刷り文書が回覧され,共鳴者によって再タイプされる形態をとる。1956年のスターリン批判,ハンガリー事件のころから活発化し,56-60年のギンズブルグ編《シンタクシス》,61年のガランスコフ,ブコフスキー編《フェニックス61》などの詩文集が先駆けとなった。64年のフルシチョフ失脚前後からは,地下情報を集成した《政治日誌》,ヤキール編の《時事クロニクル》などが継続的に刊行され,体制批判派の拠点となった。資料が国外に持ち出され,あるいはシニャフスキーの著作のように変名で国外出版される場合もあり,これをタミズダートtamizdat(タムは外地)という。当局の弾圧はきびしく,編集者,寄稿者の多くに投獄,精神病院収容の措置が繰り返されているが,この地下出版の動きは根強くつづいている。サミズダートで知られるようになったものに,メドベージェフ兄弟,グリゴレンコ,サハロフらの著作,ソルジェニーツィンやアフマートワの作品の一部,ブロツキーの詩などがある。70年代後半以降は,逮捕者の続出に抗議する人権運動の色彩が強く反映され,また79年に文集《メトロポール》を出したアクショーノフのように,指導的立場にある作家の亡命も見られた。しかし,ペレストロイカ以後は,検閲が実質的に廃止され,著作公表の機会が多くなったため,サミズダートはほとんど消滅した。
執筆者:江川 卓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…異論派は1960年代のスターリン批判徹底化の動きの中から出てきた。すでに60年代はじめから自らの主張をタイプ・コピーで広めること(サミズダート),広場で朗読集会を開くこと,国外で作品を発表することは始まっていた。この面での最初の衝突は66年2月10~14日のダニエル=シニャフスキー裁判である。…
※「サミズダート」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新