さらば

精選版 日本国語大辞典 「さらば」の意味・読み・例文・類語

さら‐ば

(「さら」は動詞「さり(然有)」の未然形)
[1] 〘接続〙
① 先行の事柄を受けて、後続の事柄が起こることを示す(順態の仮定条件)。それならば。それでは。しからば。
※竹取(9C末‐10C初)「さらばいかがはせん。難き物なり共仰せごとに従ひて求めにまからん」
② (後に打消語句を伴って) 先行の事柄に対し、後続の事柄が反対・対立の関係にあることを示す(逆態の確定条件)。しかし。だからといって。そのくせ。
平家(13C前)八「白衣なる法師どもに具しておはしけるが、さらばいそぎもあゆみ給はで」
[2] 〘感動〙 別れの挨拶(あいさつ)に用いる語。さようなら。
※後撰(951‐953頃)離別・一三四一「さらばよと別れし時にいはませば我も涙におぼほれなまし〈伊勢〉」
※御伽草子・蛤の草紙(室町末)「『さらば』といひて、しじらが宿を立ち出でて」
[語誌](1)中古では(一)①の用法が中心で、中世以降(一)②の用法や(二)の感動詞的用法が多くなる。
(2)中世後期では「さらばさらば」と重ねた言い方が多く見え、さらに近世中期には「さらばの鳥」のような名詞的用法が生じ、打ち解けた間柄で用いる町人言葉「おさらば」もあらわれた。近世後期になると「さようならば」から生じた「さようなら」が一般化したが、近代以降は文語的な表現として「さらば」が用いられている。

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