サントウサイ (山東菜)
Brassica campestris L.var.amplexicaulis
アブラナ科の一年草でカブ・アブラナ類に属する。中国で品種分化したハクサイ類のなかで,ハクサイのようには結球しない品種群のものである。中国北部で起源し,不結球性なのでハクサイの原始型と考えられる。関東市場では漬菜の代表的なものとして取引されている。結球ハクサイより小型で,成熟期に達した株の外葉は外側に垂れ下がるような形になり,中心の部分の葉も包合・結球することはない。黄緑色の葉面にはしわが多く葉は軟らかい。〈四ッ谷山東〉〈西新井山東〉〈花芯ハクサイ〉などの品種がある。埼玉県,東京都などに栽培が多く,東京の下町での消費が多い。また最近では〈ベカナ〉と称し,コマツナなどの菜類のように厚まきにして,未成熟株を収穫する栽培がハウスなどで行われている。おもに漬物,汁の実に使われる。
執筆者:平岡 達也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
サントウサイ
さんとうさい / 山東菜
[学] Brassica rapa L. var. pekinensis (Lour.) Kitam.
Brassica rapa L. var. amplexicaulis Tanaka et Ono subvar. dentata Kitam.
アブラナ科(APG分類:アブラナ科)の一年草。ハクサイの系統で非結球性ないし半結球性の野菜。明治初年に中国の山東省から日本に導入されたサントウハクサイ(山東白菜)から変わったものといわれる。葉は淡緑色で、縁(へり)はぎざぎざして波打つ。繊維が少なく、煮物や漬物に適している。結球性のハクサイが今日のように普及する以前は主要な秋の漬け菜とされていたが、現在は栽培は少ない。漬物にするには、材料の目方の6%内外の食塩を用いる。生(なま)の葉では100グラム当り20ミリグラムのビタミンCを含むが、煮たり漬けたりするとほとんど失われる。愛知県産が有名であるが、東北地方の盛岡山東菜のような地方品種もある。栽培法はハクサイとほとんど同じで、8月下旬から9月下旬に種子を播(ま)く。収穫は12月が最盛期である。
[星川清親 2020年11月13日]
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サントウサイ
[Brassica campestris (pekinensis group)].ハクサイの一変種.結球はハクサイより劣る.
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
世界大百科事典(旧版)内のサントウサイの言及
【漬菜】より
…中国では古くよりアブラナ(ナタネ)類の栽培が盛んで,葉や花蕾(からい)が野菜として,また種子が油料として利用されてきた。日本での漬菜の発達は,カブに近い〈あおな〉,アブラナに近いクキタチナやハタケナにあたる〈うんだい〉,キョウナやミブナにあたる〈みずな〉が古い記録に現れ(《和名抄》),江戸時代にはナガサキハクサイの原種である〈唐菜〉(《長崎見聞録》)や非結球ハクサイに属する〈白茎菜〉(《成形図説》)が見られ,明治初年にはタイサイやサントウサイが導入された。また古くから中国などより渡来,導入されたアブラナ類やカブなどが複雑に交雑を重ね,各地方の風土に合った漬菜類が分化し,土着して日本独自の多くの品種ができ上がった。…
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