ザグレウス(読み)ざぐれうす(英語表記)Zagreus

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ザグレウス」の意味・わかりやすい解説

ザグレウス
Zagreus

古代ギリシアの密儀宗教オルフェウス教の神。ゼウスが娘のペルセフォネと,ヘビに化身し交わってもうけた子で,父に鍾愛され,その後継者の地位を約束され,アポロンとクレテスたちに預けられて,パルナソスの山中でひそかに育てられていたが,このことを知ったゼウスの妃ヘラは,ティタンたちをそそのかしてこの幼児の神を虐殺させた。ティタンたちは,彼を八つ裂きにし,その肉を料理して食べたところで,このことを知ったゼウスによって雷で焼殺され,その灰から人間がつくられたので,人間は,オルフェウス教の教義によれば,ティタンに由来するあしき肉体の牢獄の中にザグレウス破片にほかならない神的霊魂をもつことになった。一方ザグレウスの心臓は,まだティタンに食われず鼓動し続けていたのを,アテナがゼウスに渡し,ゼウスはこれを飲み,またはセメレに飲ませたうえでこの愛人と交わり,ディオニュソスをもうけたので,ディオニュソスは,実はザグレウスの生れ変りにほかならないという。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ザグレウス」の意味・わかりやすい解説

ザグレウス
ざぐれうす
Zagreus

ギリシア神話の神。オルフェウス教でディオニソスと同一視される。ゼウスは蛇に姿を変えてペルセフォネと交わりディオニソスをもうけるが、これに嫉妬(しっと)したヘラは、ティタンをそそのかしてディオニソスを襲わせ、八つ裂きにして食わせてしまう。しかし心臓だけがアテネによって救われたため、ゼウスはティタンを稲妻で焼き殺す一方、この心臓を飲み下し、のちにカドモスの娘セメレを誘惑したおりに、新たにこれをディオニソス・ザグレウスとして誕生させた。ザグレウスとは「引き裂かれたる」という意味で、非ギリシア(おそらくはフリギアかトラキア)系の名前である。

[丹下和彦]

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