オルフェウス教(読み)おるふぇうすきょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オルフェウス教」の意味・わかりやすい解説

オルフェウス教
おるふぇうすきょう

古代ギリシアの密儀宗教。紀元前7世紀ごろから前5世紀ごろに栄え、とくに南イタリアのギリシア植民都市、シチリア島にかけて広く信仰された。プラトンピンダロスアリストファネスなどもそれに言及しているが、オルフェウス教特色は、輪廻(りんね)転生の教説にあり、肉体は牢獄(ろうごく)であり、それに対して魂(プシケ)は永遠不滅の本質であるとみなしている点であろう。そうした人間の二元性はディオニソス・ザグレウスの神話によって説明されるとしている。つまり、魂はディオニソス・ザグレウスの神的要素に由来し、肉体はティタンの悪の要素を受け継いでいるというわけである。オルフェウス教の目的は、過去の罪によって肉体に幽閉されている魂を救済することにある。そうした教義肉食を避ける慣習、浄(きよ)めの儀式など、さまざまな点でピタゴラス派の宗教運動ときわめて似た特徴を備えているが、ともに北方系の宗教の影響が色濃いとされている。

[植島啓司]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オルフェウス教」の意味・わかりやすい解説

オルフェウス教
オルフェウスきょう
Orphism

オルフェウスを伝説上の創始者とする古代ギリシアの密儀宗教。密儀に入信し,肉食の禁止などの戒律を守る信徒に,死後の世界における幸福を約束した。ゼウスの愛児ザグレウスの生れ変りとされるディオニュソスを主神とあがめ,人間の肉体は,ザグレウスを殺して食べ,ゼウスの雷によって焼殺された悪神ティタンたちの灰からつくられたが,そのなかにはティタンに食われたザグレウスの破片にほかならない不滅の神的霊魂が閉じ込められていて解放と神界への復帰を渇望していると説く。その教義によって,プラトン哲学やグノーシス派の教理などに強い影響を与え,西洋の神秘思想の重要な源泉の一つとなった。

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