セメレ(読み)せめれ(英語表記)Semele

日本大百科全書(ニッポニカ) 「セメレ」の意味・わかりやすい解説

セメレ
せめれ
Semele

ギリシア神話の女神。テバイテーベ)王カドモスとハルモニアの娘。ゼウスの愛を受けて身ごもるが、これを嫉妬(しっと)したヘラにそそのかされ、ゼウスに妃(きさき)ヘラを訪ねるときと同じ姿で訪ねてきてくれるよう頼む。そのため、しかたなく雷神となって現れたゼウスの稲妻に焼かれて死ぬ。しかし、6か月の胎児は無事に助け出されてゼウスの腿(もも)に縫い込まれ、月満ちて誕生した。これがディオニソス神である。ところがセメレの姉妹であるアガウエイノ、アウトノエらは、子供の父親がゼウスではなく人間の男であると中傷したため、ディオニソスの罰を受けて狂気に陥った。のちにセメレはディオニソスによって冥府(めいふ)より助け出され、天上に迎えられて神となり、テオネとよばれた。

[丹下和彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「セメレ」の意味・わかりやすい解説

セメレ
Semelē

ギリシア神話のディオニュソスの母。テーベの初代の王カドモスとハルモニアの娘で,ゼウスの愛人となり妊娠したが,乳母の姿をかりて彼女をだましたヘラの奸計にかかって,ゼウスに本体を見せてほしいと強要し,雷神の熱によって焼殺されてしまった。しかし胎児のディオニュソスは,ゼウスによって母体より救い出されて,無事に成長し,のちに冥府から母を連れ戻し,オリュンポスの神々の仲間入りをさせたという。

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百科事典マイペディア 「セメレ」の意味・わかりやすい解説

セメレ

ギリシア伝説のテーバイ王カドモスとハルモニアの娘。テュオネとも。ゼウスに愛されたが,ヘラの奸計によりその雷霆(らいてい)に打たれて死ぬ。胎内にいたディオニュソスは救い出され,のち母親を冥府から呼び戻した。

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世界大百科事典(旧版)内のセメレの言及

【ギリシア神話】より

…ゼウスは人間の女との間にも多数の子をもうける。主要なものだけを挙げれば,テーバイの王女セメレSemelēによりディオニュソスを,アルクメネAlkmēnēによりヘラクレス,ダナエDanaēによりペルセウス,エウロペによりミノスを得た。それぞれの場合につき細目と関与者を特徴づける物語が語られている。…

【ザグレウス】より

…蛇の姿に変じたゼウスがペルセフォネと交わって生まれた子で,父神の後継者となるべく養育されていたが,ゼウスの妃ヘラにそそのかされたティタン神たちに八つ裂きにされて食われた。ただ心臓だけは女神アテナに救われたので,これをゼウスがテーバイ王女セメレSemelēに嚥下(えんげ)させ,第2のザグレウスたるディオニュソスが誕生したという。【水谷 智洋】。…

【ディオニュソス】より

…バッカスはその英語読み。 神話では,彼はゼウスとテーバイ王カドモスの娘セメレSemelēの子とされ,人間の女を母とする彼がオリュンポスの神々の列に加わるまでの経緯が次のように語られる。ゼウスに愛されて子を宿したセメレは,これを嫉妬(しつと)したゼウスの妃ヘラに欺かれ,雷電をもつゼウスに神本来の姿で訪れるよう願ったため,その雷にうたれて焼け死んだが,ゼウスは彼女の胎内から嬰児(えいじ)を取り出し,みずからの腿(もも)に縫い込んで月満ちるのを待った。…

【テーベ伝説】より

…彼とハルモニアHarmoniaとの結婚式は,すべての神々が臨席し祝福した盛大なものとされるが,その娘たちには不幸な最期を遂げたものが多い。ゼウスの雷霆(らいてい)にうたれて死につつもディオニュソスを生んだセメレSemelē,わが子ペンテウスを八つ裂きにするアガウエAgauē(エウリピデスの悲劇《バッコスの信女》を参照),海にわが身を投じて果てたイノInōなどである。なおテーベのアクロポリスは,カドモスにちなんでカドメイアKadmeiaと呼ばれたが,ここからは近年バビロニアの円筒印章が出土し,東方との交流のあったことを裏づけている。…

※「セメレ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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