改訂新版 世界大百科事典 「シギゾウムシ」の意味・わかりやすい解説
シギゾウムシ (鴫象虫)
甲虫目ゾウムシ科シギゾウムシ属Curculioの昆虫の総称。口吻(こうふん)が鳥のシギのくちばしのように長いのでこの名がある。ドングリ類,ツバキ,エゴなどの実(種子)に口吻で穴を開け,産卵管を挿入して卵を産みつける。幼虫は実の中で成育する。ドングリ類に潜るシギゾウムシは英名でacorn weevilと呼ばれる。日本にはクリシギゾウムシ,コナラシギゾウムシ,ツバキシギゾウムシ,エゴシギゾウムシなどを産する。クリシギゾウムシC.dentipesはクリの実の害虫として知られる。日本全国のほか,朝鮮半島,東シベリアなどにも分布する。背面は黄灰色の鱗毛に覆われ,翅の中央後方に横帯がある。体長約9mm。8月ころもっとも多く出現し,いがの上から実の種皮まで穴を開け産卵。幼虫は実の中に穿孔(せんこう)し,実が落下する10月ころには体長約12mmの終齢に達する。幼虫は胸脚を欠き,頭部は褐色,体は白色。孔道に糞を残し,実の外には排出しない。実に丸い穴を開けて脱出,地面に潜って越冬,翌年の7月ころ土中で蛹化(ようか)する。
執筆者:林 長閑
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報