しびれ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「しびれ」の意味・わかりやすい解説

しびれ

長い間座っていて足がしびれるなどの場合に、俗にこの語が用いられるが、医学的には正常の感覚がなくなるなどの知覚障害を意味して使われる。知覚障害には、自覚的に病的な感じとして認められるものと、診察などの検査によって他覚的に認められるものとがある。自覚的なものには、異常感覚と神経痛・脊髄(せきずい)痛などの自発痛が含まれる。しびれ、あるいはしびれ感といったものは、人により、ピリピリとかビリビリというように、いろいろに表現されるが、実際には末梢(まっしょう)神経および中枢神経の障害によっておこる異常感覚である。知覚障害を検査するには、体の皮膚を筆で触って触覚を調べる、安全ピンを用いて痛覚を調べる、試験管に氷水あるいは温水を入れておき、それを皮膚に当てて温度覚を調べるなどの方法が用いられる。いずれも、正常、すなわち健康な部分と対照する必要があり、正常より低下していれば知覚鈍麻、亢進(こうしん)していれば知覚過敏、まったく感じがなければ知覚脱失と表現している。知覚障害は、その部位種類程度によって、原因となる病変の部位を想像することが可能なため、知覚障害の検査は、神経疾患の診断上臨床的に重視されている。たとえば、顔面から下肢に至る全身右側に知覚鈍麻が認められる場合には、その反対側、すなわち大脳左側の病変の存在が疑われることになる。

渡辺 裕]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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