改訂新版 世界大百科事典 「シフゾウ」の意味・わかりやすい解説
シフゾウ (四不像)
Père David's deer
Elaphurus davidianus
偶蹄目シカ科の哺乳類。大きなひづめはウシに,頭はウマに,体はロバに,角はシカに似るが,そのいずれでもないという意で四不像の名がつけられたという。しかし,明らかにシカであって,野生の個体群が約1800年前に滅びてしまい,北京の中国皇帝の狩猟園にごく少数が飼われていたものが1900年ころイギリスのベドフォード卿の庭園に移され,最終的に生きのびたという数奇な運命を除けば特別に変わったところはない。北京の狩猟園に飼われていたものは,21年に死に絶え,56年にイギリスから再び導入された。現在では,約800頭が世界の動物園で飼育されている。体長1.5m,尾長50cm,体重150~200kg。大きなひづめをもつことから,水辺近くの湿地など体を支えるのに困難な土地に好んですみついていたものと推定され,飼育されているものも,他のシカの仲間よりも水を好んで飲み,水浴びをよくする。角が生えるのは雄のみで,雄は繁殖期になると多くの雌をしたがえるいわゆるハレムを形成する。妊娠期間は250~270日で,雌は1産1子を出産。子は2年すこしで性的に成熟し,寿命は20年くらい。なお,英名はこのシカを世界に紹介(1865)したフランス人宣教師ダビッドA.Davidにちなむ。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報