日本大百科全書(ニッポニカ) 「シャチブリ」の意味・わかりやすい解説
シャチブリ
しゃちぶり / 鯱振
Pacific jellynose fish
tadpole fish
[学] Ateleopus japonicus
硬骨魚綱シャチブリ目シャチブリ科に属する海水魚。鹿島灘(かしまなだ)から土佐湾の太平洋側と新潟県以南の日本海側、沖縄舟状海盆(しゅうじょうかいぼん)(トラフ)に分布する。体は前部でいくぶん側扁(そくへん)し、尾部は長くて強く側扁する。体は柔らかくぶよぶよしている。吻(ふん)はゼラチン質で強く突出する。目は口の上方に位置し、小さくて、頭長のおよそ8分の1~10分の1。口は頭の下面におよそ水平に開き、上顎(じょうがく)の後端は目の後縁付近に達する。上顎に顆粒(かりゅう)状または短い円錐(えんすい)状の歯がある。下顎、鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)、口蓋骨、および舌上に歯がない。鰓耙(さいは)は上枝にはないか、あっても1本、下枝には8~9本あり、短くて板状。体には鱗(うろこ)がない。側線は体の中央部を走るが、鮮明ではない。背びれ軟条は8~10本で、頭の後端上方から始まり、高さは高いが、その基底長(付け根の部分の長さ)は著しく短い。臀(しり)びれ基底は著しく長く、尾びれとつながる。臀びれ軟条と尾びれ軟条をあわせると110~131本。胸びれは短く、先端は臀びれに達しない。腹びれ軟条は3~4本で、第2軟条は伸長し、後端は胸びれの先端下方近くに達する。体は一様に半透明で、紫褐色を帯び、吻端は白色。各ひれは黒褐色で、伸長した腹びれの先端は白い。水深150~500メートルの砂泥底に生息し、底生の小動物を食べる。全長は1メートルほどになる。
2003年(平成15)に魚類研究者の尼岡邦夫(あまおかくにお)(1936― )と小林知吉(こばやしともきち)(1945― )が、山口県の日本海側の仙崎(せんざき)湾と萩(はぎ)湾からとれた2個体の後期仔魚(しぎょ)をシャチブリに同定し、シャチブリ科の仔魚として世界で初めて報告した。体長は185.1ミリメートル、258ミリメートルと大きく、体は細長くて、透明で、体側に多くのオレンジ色の帯状斑(はん)と臀びれに多くの黄色の線状斑があり、背びれと腹びれは長く糸状に伸びるなどの顕著な特徴をもつ。
従来、シャチブリ属には日本から下顎に歯がない本種とシログチシャチブリ、および下顎に歯のあるタナベシャチブリとムラサキシャチブリの4種が知られていた。しかし、2015年に加賀達也(かがたつや)らは形態とDNAの分析によってタナベシャチブリとムラサキシャチブリをシャチブリと同種にし、これらの種の形態の違いは個体変異や成長段階による差であるとした。また、加賀は2016年にシログチシャチブリを新種として記載し、A. edentatusの学名を与えた。
[上野輝彌・尼岡邦夫 2025年9月17日]



