ジロードゥー(英語表記)Jean Giraudoux

改訂新版 世界大百科事典 「ジロードゥー」の意味・わかりやすい解説

ジロードゥー
Jean Giraudoux
生没年:1882-1944

フランスの小説家,劇作家,外交官。南西フランスのベラックに生まれ,小学校から高等師範学校に至るまで首席を通した秀才であった。ハーバード大学のフランス語講師を1年間勤めたのち,1907年には《ル・マタン》紙の文芸欄を担当し,翌々年に詩的散文《田舎の女たち》を発表して,ジッドに激賞された。10年に外交官(最晩年には情報局長)に登用されたが,第1次大戦に召集され,2度も負傷する。外交官の職務と並行して文筆にも励み,18年の自伝的小説《悲壮なシモン》あたりから,本格的に小説の創作に取り組む。以後《シュザンヌと太平洋》(1921),《ジークフリートとリモージュ人》(1922),《ベラ》(1926),《ジェローム・バルディニの冒険》(1930),《選ばれた女たちの選択》(1938)等の作品がつづくが,これらの小説はいずれも,合理的心理や日常的論理を排して,もっぱら詩的隠喩を駆使して,フランスとドイツ,人間と自然,生者と死者等のもろもろ相克を乗り越えた詩的幸福・調和の世界の実現を目指したものである。L.ジュベとの出会いに触発された戯曲創作活動においても,写実劇常套を脱して,諸対立の克服の場としての文学的香気に満ちた舞台空間をつくり出した。戯曲作品に《ジークフリート》(1928),《アンフィトリオン38》(1929),《間奏曲》(1933),《トロイ戦争は起こらないだろう》(1935),《オンディーヌ》(1939),《ソドムゴモラ》(1943)等がある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のジロードゥーの言及

【フランス演劇】より

…コポーの上演した新しい劇作(J.ルナール,クルトリーヌ,クローデル,C.ビルドラック《商船テナシティ》)や古典(モリエール,シェークスピア喜劇)に比べると,その弟子であったジュベ,デュラン,ロシアから来たピトエフ,ドイツ表現派との接点を作るバティの〈カルテル四人組〉による文学戯曲の上演ははるかに多彩である。ジュベがJ.ロマン(《クノック》),M.アシャール(《お月さまのジャン》),J.コクトー(《地獄の機械》),そして演出家と作家の協力の記念碑となるJ.ジロードゥー(《トロイ戦争は起こらないだろう》《オンディーヌ》)を経てサルトル(《悪魔と神》)を,デュランがL.ピランデロ(《御意にまかす》)からA.サラクルー(《地球は丸い》),サルトル(《蠅》)に至る多彩な作家の初演(ピランデロ作品はフランス初演)を果たしたのに対し,ピトエフ(ピトエフ夫妻)は,クローデル(《交換》)や初期のJ.アヌイ(《荷物なき旅行者》)等を除けば,主としてチェーホフ(《かもめ》),ピランデロ(《エンリコ4世》),イプセン(《人形の家》),F.モルナール(《リリオム》),G.B.ショー(《セント・ジョーン》)等の外国作家を紹介し,またバティはガンティヨンSimon Gantillon(1887‐1961。《娼婦マヤ》)などマイナーな作家で成功を収めた。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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