スイゼンジナ (水前寺菜)
Gynura bicolor DC.
若芽および葉を食用とするキク科の多年草。熱帯アジアの原産で,奄美大島,九州南部には野生化している。日本に入ったのは1759年(宝暦9)で,スイゼンソウと記している。熊本市の水前寺でわずかに自家用として栽培されるのみで,幻の野菜といわれたが,2000年代後半から復活の傾向にある。草丈は30~60cmになる。茎は分岐生長して開張し,ときに匍匐(ほふく)状になることがある。葉は互生し肉厚で,卵状披針形である。先端がとがり,葉縁には鋭い鋸歯がある。葉面は光沢があり,表面は緑色,裏面は茎とともに淡紫色をおびる。夏季に黄赤色の管状花からなる頭花をつけ,土壌を選ばない。繁殖は挿木,株分けによる。周年採取できるが,早春の野菜である。若芽を摘んで汁の実,浸し物,あえ物にして利用する。また観賞用にも栽植される。
執筆者:高橋 文次郎
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スイゼンジナ
すいぜんじな / 水前寺菜
[学] Gynura bicolor (Willd.) DC.
キク科(APG分類:キク科)の多年草。茎は柔らかく、多数分枝し、他物に寄りかかると約4メートルになる。葉は互生し、長楕円(ちょうだえん)状披針(ひしん)形で、先端が鋭く、基部がくさび形で、縁(へり)には鋭い鋸歯(きょし)がある。やや多肉質で柔らかく、表面は緑色、裏面は紫色を帯びる。7~10月、枝の頂に大形の散房花序をつける。頭花は管状花のみからなり、赤黄色。総包葉は円筒状、総包片は1列である。東アジアの熱帯原産で、葉を食用とするため現地でも広く栽培される。日本でも古くから栽培されたが、四国南部や九州南部ではしばしば自生している。名は、熊本県の水前寺で栽培されていたことによる。
[小山博滋 2022年3月23日]
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スイゼンジナ(水前寺菜)
スイゼンジナ
Gynura bicolor
キク科の多年草で,熱帯アジアの原産。日本では栽培品であったが,九州南部では野生化して湿地に群生しているところがある。茎の基部は木化してやや斜めにはい,高さ 40~50cmの枝を出す。葉は長楕円形で質が厚く軟らかい。裏面は紫色を帯びている。春から夏にかけて,枝の先端に径 1cm弱の,管状花だけの黄赤色の頭状花をつける。和名は熊本市の水前寺で古くから栽培されたことによる。
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「スイゼンジナ」の意味・わかりやすい解説
スイゼンジナ
水前寺菜。熱帯アジア原産のキク科の野菜。暖地ではときに野生化している。高さ30〜60cm,多く分枝し,茎の下部はやや木化する。葉は長楕円形で厚く裏面は紫色となる。夏,枝先に黄色の頭花を開く。葉はゆでると柔らかく粘りがあり,浸し物,汁の実などとする。また花を観賞することもある。
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