起源的には16世紀末,イタリアのナポリに出現したコメディア・デラルテの〈仮面〉の一つで,隊長型。その名のごとく〈小ぜり合いscaramuccia〉(イタリア語)を得意とし,逃げ回るばかりの臆病者である。頭から爪先まで黒ずくめの装束で,当初は羽飾つきの帽子ととんがり鼻の半仮面を着用する。この隊長型人物を下僕役に変え,発展させて17世紀フランス喜劇界に巨大な影響を与えたのが,スカラムーシュことティベリオ・フィオレリ(またはフィオリリ)Tiberio Fiorelli(1604ころ-94)である。騎兵将校を父とし,早くから演劇界に身を投じた彼は,若くしてイタリア中に名を知られた。一座と共にフランスを訪れたのは遅くとも1640年代初めで,マザラン,幼いルイ14世,王太后は彼の至芸のとりこになった。フロンドの乱でいったん帰国するが,再度訪仏,パリに定着してイタリア劇団の中心となる。黒ずくめの衣装を身に,顔は表情を生かすために白塗りにした。得意のチターの弾き語りに美声を乗せて女を口説く下僕役,他人の懐ばかり当てに世を渡る酒好きの小悪党の道化役で売った。沈黙したまま15分間観客を笑わせ続けたとか,83歳でなお相手役の横面を足で張り倒せたとか,その逸話は豊富である。モリエールの演技に多大の示唆を与えた。その死後,彼に匹敵するスカラムーシュ役者は出ず,スカラムーシュの名はフィオレリの代名詞となった。
執筆者:鈴木 康司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…論理的構成と多調性,ラテン的明澄性と抒情性を特徴とし,いわゆる新古典的作風を示している。代表作にクローデルの台本によるオペラ《クリストフ・コロン》(1928),J.コクトーの台本によるバレエ曲《屋根の上の牡牛Le bœuf sur le toit》(1919),B.サンドラールの台本による,同《世界の創造》(1923),オーケストラ曲《ブラジルの思い出》(1921),同《プロバンス組曲》(1936),2台のピアノのための《スカラムーシュ》(1937)などがある。【寺田 兼文】。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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