六訂版 家庭医学大全科 「スキルス胃がん」の解説
スキルス胃がん
(食道・胃・腸の病気)
胃がんは、病理学的には、大部分が腺管構造をとって胃の内壁に現れる分化型腺がんに分類されます。しかし、一部の胃がんは腺管構造を作らず、細胞がばらばらになって胃の粘膜の下に広がっていきます。これは細胞の種類としては病理学的に
スキルスとはギリシア語のskirrhos(硬いの意)に由来しますが、ボルマン4型胃がんとスキルス胃がんはほぼ同じ意味です。このがんの特徴としては女性に多い(男女比2対3)こと、発症年齢が低い(他の胃がんに比べて3~4歳若く、とくに女性にその傾向が強い)ことがあげられます。
診断・治療上の問題点
進行したスキルス胃がんは、胃X線造影検査や内視鏡検査で診断は容易です。しかし比較的初期(胃の一部に病変が限られている)のスキルス胃がんは胃の粘膜面の変化が乏しく、内視鏡下の生検による診断が
臨床的な問題点としては、X線検査や内視鏡検査での早期診断が困難なこと、進行が早く高率に腹膜へ転移するため切除で治る可能性が低く、また有効な抗がん薬もないことがあげられます。70%の人ががん性腹膜炎(腹水貯留や腸管閉塞)が原因で亡くなります。切除できたとしても5年生存率は10%程度で、予後は不良です。
分化型腺がんとは違い、
早期発見が困難でもあり、手術だけで完全に切除できる可能性も低いことから、多くの集学的治療(いろいろな治療の組み合わせ)や実験的治療が試みられていますが、現在のところスキルス胃がんに対する有効な治療法はありません。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報