日本大百科全書(ニッポニカ) 「スティルポン」の意味・わかりやすい解説
スティルポン
すてぃるぽん
Stilpōn
(前380ころ―前300ころ)
古代ギリシアのメガラ学派の哲学者。彼の時代にメガラ学派はギリシア全土に広まった。論争に巧みで、普遍を廃棄して個体こそ実在とする観点から、プラトンのイデア論批判を試みた。「人間が存在する」という場合の人間は特定の個体を意味していないのだから、人間のイデアは空虚である。逆に、野菜がイデアとして1万年前からも存在していれば、眼前の野菜は野菜でなくなってしまう。こうして普遍を廃した結果、同一性命題以外の「その人は色白である」というような述語付けも誤りとした。こうしたなかにメガラ学派の一元論が現れている。
[山本 巍 2015年1月20日]