日本大百科全書(ニッポニカ) 「ストア」の意味・わかりやすい解説
ストア
すとあ
stoa
古代ギリシアのアゴラや聖地など多くの市民が集う所に建てられた列柱廊。ラテン語のポルティクスporticusと同義。長方形の廊下のような長い建物で、一方を列柱廊として開放し、他方を石造の壁で閉ざし、壁の面には小さくくぎった店舗が並んでいた。この建物は市民に日よけと買い物のための店舗を提供することを目的として建てられたもので、初期の遺構にサモス島のヘラの聖域のストア(前6世紀)がある。紀元前5世紀から前4世紀に入るとギリシア各地に建てられたが、アテネのアゴラにあったストア・ポイキレ(彩色柱廊の意)がもっとも著名である。竣工(しゅんこう)は前460年ごろで、当代最大の画家ポリュグノトスの四枚の壁画で飾られていたという。またヘレニスティック期にも各地に壮大なストアが建てられたが、ペルガモンのアッタロス2世がアテネに建てたものは二層からなる大ストアで、一階後部に商店や倉庫が並び、柱廊部はドリス式、イオニア式、さらにペルガモン式の列柱が二重に各22本ずつ並んでいる。
ストアは、市民が集い、日々の話題を交換し、ときには哲学や政治が論じられる場ともなった。ストア学派のゼノンは前述のアテネのストア・ポイキレで講義をしたことから、ストア学派とよばれたと伝えられる。
[前田正明]