日本大百科全書(ニッポニカ) 「スベドベリー」の意味・わかりやすい解説
スベドベリー
すべどべりー
Theodor Svedberg
(1884―1971)
スウェーデンの物理化学者。8月30日、バルボに生まれる。自然探究心の旺盛(おうせい)な父の影響もあって、すでにギムナジウムの生徒の時代より化学に傾いていた。1904年ウプサラ大学に入学、1907年にはコロイド溶液の研究で学位を取得、1912年にはスウェーデンで最初の物理化学の教授となった。物理化学、コロイド化学は当時化学の新領域であった。1920年ごろまで彼はコロイド分散系の諸性質、とくにコロイド粒子のブラウン運動や沈降平衡の研究に従事していたが、やがてコロイド微粒子の沈降の研究には重力では不十分で、重力よりはるかに強い遠心力場の採用が好適であることを着想、1923年ごろから回転数のきわめて大きい特殊の遠心機(超遠心機)の製作に専心し、ついにタンパク質溶液の沈降の測定からその分子量を決定することに成功した。この業績は画期的なもので、1926年ノーベル化学賞を受けた。
その後も超遠心機の改良に精根を傾け、最初の機械での重力の5000倍という値から、ついに1933年には重力の40万倍に到達、幾度かの破壊事故を克服しつつ、重力の100万倍を目ざして努力を続けた。1930年代には多糖類の研究に進出、第二次世界大戦中には合成ゴムの研究、原子核研究所の建設などに力を注いだ。1971年2月25日死去。
[中川鶴太郎]