超遠心機(読み)ちょうえんしんき

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

超遠心機
ちょうえんしんき

溶液の入ったチューブを超高速回転させることにより高い重力場を発生させ、溶質の沈降速度を高める装置。球形粒子の沈降速度はストークスの法則により粒子半径と関係している。重力を増して小さな粒子の沈降速度を測定可能なまでに高めるため、1923年ごろスウェーデンの物理化学者スベドベリーらが油駆動タービンを用いた超遠心機を開発した。その後改良が加えられ、電気駆動モーターを用い、重力の数十万倍の遠心力が得られるようになった。試料はローターとよばれる金属製回転体中に入れるが、空気摩擦による発熱を避けるため、ローターの回転する室内は高真空となっている。超遠心機には分析型と調製型の2種がある。

(1)分析型超遠心機 沈降する物質のシュリーレン界面を見るための光学系を備えており、界面を写真に撮ることができ、遠心条件と境界像から容易に沈降速度を知ることができる。沈降速度がわかれば、拡散定数、溶液の密度、粒子のモル比容から分子量を決定できる。

(2)調製型超遠心機 極微小粒子を沈殿させるのに用いられる。細胞破砕液から通常型の高速遠心機で沈殿するものを除いた上澄みをさらに超高速遠心機にかけることにより、リボゾームなどを得ることができる。高密度ショ糖液に懸濁した細胞破砕物を超遠心し、細胞内顆粒(かりゅう)の小さな密度差や大きさ(回転半径)の差違を利用して細胞小器官などを分画精製したり、塩化セシウム溶液を用いて核酸を浮遊密度差で分画するのにも用いられる。

[嶋田 拓]

『化学工学会編『化学工学の進歩 第28集 流体・粒子系分離』(1994・槇書店)』『粉体工学会編『粒子径計測技術』(1994・日刊工業新聞社)』

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化学辞典 第2版の解説

超遠心機
チョウエンシンキ
ultracentrifuge

遠心力を利用して生体成分を分離ないしは生体成分の大きさや相互作用を分析する装置.分析用超遠心機と分離用超遠心機とがある.分析用超遠心機は,遠心力場における高分子の挙動を調べ,分子量,分子の形状などを求めるために利用される.ローターを毎分数万回回転させる強力な駆動装置,摩擦熱の発生を抑えるため,ローター室内を0.1 Pa 程度にまで減圧する真空ポンプ,温度を一定に保つための冷凍機とヒーター,さらにシュリーレン光学系,干渉光学系などの光学系を装備している.分離用超遠心機細胞断片,細胞内の諸器官を分離する目的で使用される.駆動装置,真空ポンプ,冷凍機を内蔵しているが,光学系はなく,構造は分析用超遠心機よりやや簡単である.[別用語参照]遠心機沈降速度法沈降平衡法

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百科事典マイペディアの解説

超遠心機【ちょうえんしんき】

限外遠心機とも。毎分回転数が2万以上,遠心力加速度が重力加速度の数万倍以上に達する遠心分離機。分析用(内部観察用の特殊光学装置を備える)と分離用に大別前者高分子分子量測定等に,後者は一般の低速遠心分離機では分離できないウイルスタンパク質濃縮・分離等に広く使用される。

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精選版 日本国語大辞典の解説

ちょう‐えんしんき テウヱンシンキ【超遠心機】

〘名〙 溶液の入った容器を超高速で回転させ、重力の数十万倍の遠心力が得られる遠心分離機。高分子化学、生化学、生物物理学などの研究に利用。〔癌(1955)〕

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世界大百科事典 第2版の解説

ちょうえんしんき【超遠心機 ultracentrifuge】

限外遠心機ともいう。一般に,毎分回転数2万回以上,遠心力加速度が重力加速度の数万倍以上に達する遠心分離機をいう。T.スベドベリ創案によるもので,高分子物質などを溶液中で沈降させるのに使用される。この場合,高分子の分子量,均一性などを調べることを目的とする装置を分析用超遠心機(狭義の超遠心機),沈降を利用して高分子の分離・精製を行うものを分離用超遠心機と呼んで区別する。なお,工業用の固液,液液分離を目的とする遠心機を遠心分離機,ウラン235 235U分離用のそれは超遠心機に比すべき回転速度であるが,単にガス遠心分離機と呼んでいる。

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