超遠心機(読み)チョウエンシンキ

デジタル大辞泉 「超遠心機」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐えんしんき〔テウヱンシンキ〕【超遠心機】

超高速回転により重力の数十万倍もの遠心力が得られる遠心分離機分子量の分析やウイルスたんぱく質の濃縮・分離などに使用。超遠心分離機

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精選版 日本国語大辞典 「超遠心機」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐えんしんきテウヱンシンキ【超遠心機】

  1. 〘 名詞 〙 溶液の入った容器を超高速で回転させ、重力の数十万倍の遠心力が得られる遠心分離機。高分子化学生化学生物物理学などの研究に利用。〔癌(1955)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「超遠心機」の意味・わかりやすい解説

超遠心機
ちょうえんしんき

溶液の入ったチューブを超高速回転させることにより高い重力場を発生させ、溶質の沈降速度を高める装置。球形粒子の沈降速度はストークスの法則により粒子半径と関係している。重力を増して小さな粒子の沈降速度を測定可能なまでに高めるため、1923年ごろスウェーデンの物理化学者スベドベリーらが油駆動タービンを用いた超遠心機を開発した。その後改良が加えられ、電気駆動モーターを用い、重力の数十万倍の遠心力が得られるようになった。試料はローターとよばれる金属製回転体中に入れるが、空気摩擦による発熱を避けるため、ローターの回転する室内は高真空となっている。超遠心機には分析型と調製型の2種がある。

(1)分析型超遠心機 沈降する物質のシュリーレン界面を見るための光学系を備えており、界面を写真に撮ることができ、遠心条件と境界像から容易に沈降速度を知ることができる。沈降速度がわかれば、拡散定数、溶液の密度、粒子のモル比容から分子量を決定できる。

(2)調製型超遠心機 極微小粒子を沈殿させるのに用いられる。細胞破砕液から通常型の高速遠心機で沈殿するものを除いた上澄みをさらに超高速遠心機にかけることにより、リボゾームなどを得ることができる。高密度ショ糖液に懸濁した細胞破砕物を超遠心し、細胞内顆粒(かりゅう)の小さな密度差や大きさ(回転半径)の差違を利用して細胞小器官などを分画精製したり、塩化セシウム溶液を用いて核酸を浮遊密度差で分画するのにも用いられる。

[嶋田 拓]

『化学工学会編『化学工学の進歩 第28集 流体・粒子系分離』(1994・槇書店)』『粉体工学会編『粒子径計測技術』(1994・日刊工業新聞社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「超遠心機」の意味・わかりやすい解説

超遠心機 (ちょうえんしんき)
ultracentrifuge

限外遠心機ともいう。一般に,毎分回転数2万回以上,遠心力加速度が重力加速度の数万倍以上に達する遠心分離機をいう。T.スベドベリの創案によるもので,高分子物質などを溶液中で沈降させるのに使用される。この場合,高分子の分子量,均一性などを調べることを目的とする装置を分析用超遠心機(狭義の超遠心機),沈降を利用して高分子の分離・精製を行うものを分離用超遠心機と呼んで区別する。なお,工業用の固液,液液分離を目的とする遠心機を遠心分離機,ウラン235 235U分離用のそれは超遠心機に比すべき回転速度であるが,単にガス遠心分離機と呼んでいる。

 駆動方式には,油タービンを用いるもの,空気タービンによるもの,電動機を用い歯車で増速を図るものなどがある。いずれにしても振動や発熱なしに十分な高速回転が安定に得られることが要求される。分析用超遠心機は回転装置のほかに,沈降の状況を観測し,いわゆる沈降図形を求める装置としてシュリーレン光学系などを備える点で分離用超遠心機と異なっている。高分子が沈降する速度は遠心力場の強さによるほか,分子量および沈降にさいして受ける摩擦力に関係する。したがって単位遠心力場における沈降速度,すなわち沈降定数を測定することによって高分子の特性づけが行えるばかりでなく,この値と拡散定数とを組み合わせるなどの適当な操作を加えて分子量の算出も行える。また分子の形状が推定できる場合もある。なお超遠心機を利用して高分子の分子量を算出する方法には,上述のほか,沈降と拡散とがつり合った平衡状態を出現させ,熱力学的に求める方法もある(沈降平衡法)。分析用超遠心機の重要な応用として,このほか沈降分析があげられる。これは沈降定数の異なった成分を含む混合溶液では,沈降図形上で成分の数およびおのおのの濃度比が求められることを利用する方法で,精製試料の純度検定,高分子混合溶液の分析には電気泳動法などと並んで標準的な手法とされている。

 このように超遠心機はタンパク質,核酸,ウイルス,DNAなどの天然高分子から,ポリスチレン硝酸セルロースなどの合成高分子,各種コロイドに至る広い対象に,その物理化学的性状や構造解析に重要な役割を果たしている。超遠心機による高分子の分離・精製はその操作がきわめて穏やかなことが特色で,生化学的研究に不可欠な手段の一つとなっている。目的とする物質を含む溶液から低速遠心で沈降しやすい不純物を除き,次に高速遠心で目的物を沈降させ,この操作を繰り返す。不純物の沈降定数との差がかなり大きい場合にしか有効でないが,この方法で各種のウイルス,細胞顆粒(かりゆう),リポタンパク質などが精製された。最近,天然高分子,タンパク質,DNAなどを各種酵素などで分解し,切断した分子の一部をそれぞれ分離し,同定する構造解析,状態分析をシーケンスで行う際に超遠心機が利用されている。
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化学辞典 第2版 「超遠心機」の解説

超遠心機
チョウエンシンキ
ultracentrifuge

遠心力を利用して生体成分を分離ないしは生体成分の大きさや相互作用を分析する装置.分析用超遠心機と分離用超遠心機とがある.分析用超遠心機は,遠心力場における高分子の挙動を調べ,分子量,分子の形状などを求めるために利用される.ローターを毎分数万回回転させる強力な駆動装置,摩擦熱の発生を抑えるため,ローター室内を0.1 Pa 程度にまで減圧する真空ポンプ,温度を一定に保つための冷凍機とヒーター,さらにシュリーレン光学系,干渉光学系などの光学系を装備している.分離用超遠心機は細胞の断片,細胞内の諸器官を分離する目的で使用される.駆動装置,真空ポンプ,冷凍機を内蔵しているが,光学系はなく,構造は分析用超遠心機よりやや簡単である.[別用語参照]遠心機沈降速度法沈降平衡法

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百科事典マイペディア 「超遠心機」の意味・わかりやすい解説

超遠心機【ちょうえんしんき】

限外遠心機とも。毎分回転数が2万以上,遠心力加速度が重力加速度の数万倍以上に達する遠心分離機。分析用(内部観察用の特殊光学装置を備える)と分離用に大別。前者は高分子の分子量測定等に,後者は一般の低速遠心分離機では分離できないウイルスやタンパク質の濃縮・分離等に広く使用される。

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栄養・生化学辞典 「超遠心機」の解説

超遠心機

 特に高速で行う遠心分離機.数万×&scriptg;から十数万×&scriptg;で分離する.

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