六訂版 家庭医学大全科 の解説
〈スポーツ外傷〉投球骨折
〈スポーツ外傷〉とうきゅうこっせつ
Pitching fracture
(運動器系の病気(外傷を含む))
どんな外傷か
ボールを投げる動作またはそれに類似した動作によって、
いずれの場合も、上腕骨の骨幹に回旋力(ひねりの力)が作用して発生すると考えられます。また、この骨折が発生する要因として、ある程度以上の筋力があること、投球フォームが悪いことなどが指摘されています。筋力の弱い小・中学生や女性、正しいフォームを習得している野球部員やプロ野球選手にはあまり起こらず、草野球の選手によく発生します。
合併損傷
症状の現れ方
使いすぎによる場合には、疼痛などの前ぶれがあることもありますが、突然発生することが少なくありません。投球動作と同時に「ボキッ」という骨折の音が聞こえ、腕が変形して動かすことができなくなります。
検査と診断
上腕が内側に曲がった変形と内出血による
治療の方法
原則的に保存療法が行われます。保存療法は、①吊り下げギプス法(肘を直角にした状態で、上腕の骨折部よりやや上方から手首までギプスを巻いてひもなどで首から吊るす方法)、②U字形ギプス副子法(上腕を内側と外側からU字状に作成したギプス副子ではさむように固定する方法)、③ファンクショナルブレース法(機能装具療法:上腕部分の全面をプラスチック製の装具でおおい、早期から肘を動かしながら治療していく方法)などがあり、いずれも治療成績は良好です。
橈骨神経麻痺の合併例の一部や徒手整復が困難な例には、手術療法が選択されることもあります。
応急処置や予防対策はどうするか
応急処置として三角巾や副子で肘と上腕を固定し、できるだけ早く整形外科を受診することが必要です。予防対策としては、上腕に大きな回旋力がかからないような投球フォームの習得や、投球前の十分なウォーミングアップを行うほか、痛みなどの前ぶれに気づいたら投球を中止することが大切です。
加藤 公
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報