日本大百科全書(ニッポニカ) 「スメルサー」の意味・わかりやすい解説
スメルサー
すめるさー
Neil Joseph Smelser
(1930― )
アメリカの社会学者。ハーバード大学でパーソンズに学び、のちオックスフォード大学に留学。1962年にカリフォルニア大学(バークリー)教授となり、指導的役割を果たし1994年に退官。その後、スタンフォード大学の行動科学高等研究センター所長(1994~2001)。彼の『産業革命における社会変動』(1959)は、イギリス産業革命史に社会学の構造分化モデルを適用して注目を集めた著作であった。ついで『集合行動の理論』(1963)は、群集行動や社会運動といった集合行動の研究に、社会システム論と価値付加プロセス論という彼独自の方法を用いて接近した記念碑的な労作であった。師パーソンズとの共著『経済と社会』(1956)以来、経済社会学にも一貫した関心をもち業績をあげている。初め構造・機能主義とよばれる立場にたっていたが、しだいにそれを修正しながら、社会変動の一般理論を構想するに至り、現在は構造・機能主義を乗り越えた広い考えにたち、『社会科学における比較の方法』(1976)、『グローバル化時代の社会学』(1994)など、社会学を橋渡し役にして人文・社会諸科学の連携を図る活動をしている。彼がつくった社会学の標準的テキストは社会学を学ぶ者に大きな影響を与えてきた。
[塩原 勉]
『N・J・スメルサー著、橋本真訳『変動の社会学――社会学的説明に関する論集』(1974・ミネルヴァ書房)』▽『ニール・J・スメルサー著、加藤昭二・奥山眞知訳『経済社会学』改訂版(1985・至誠堂)』▽『会田彰・木原孝訳『集合行動の理論』(1988・誠信書房)』▽『T・パーソンズ、N・J・スメルサー著、富永健一訳『経済と社会――経済学理論と社会学理論の統合についての研究』1・2(1992・岩波書店)』▽『山中弘訳『社会科学における比較の方法――比較文化論の基礎』(1996・玉川大学出版部)』▽『N・J・スメルサー、J・A・ディヴィス編著、曽根中清司・上野香織訳『社会学の諸領域――その進展度を探るための基礎資料』(1998・成文堂)』▽『伊藤武夫・伊藤雅之・高嶋正晴監訳『グローバル化時代の社会学』(2002・晃洋書房)』▽『T・パーソンズ編、東北社会学研究会訳『現代のアメリカ社会学』(1969・誠信書房)』▽『高城和義著『アメリカの大学とパーソンズ』(1989・日本評論社)』