日本大百科全書(ニッポニカ) 「スリオ」の意味・わかりやすい解説
スリオ
すりお
Étienne Souriau
(1892―1979)
フランスの美学者、哲学者。美学者・哲学者であったポール・スリオPaul Souriau(1852―1926)を父としてリールに生まれる。各地のリセ、大学で教えたのち、1941年からソルボンヌ大学(パリ大学)講師、1945~1962年同大学の美学の教授を務め、パリで没した。その間、フランス美学会会長、フランス美学雑誌主幹、国際美学会会長などの要職にあり、1958年には道徳政治学アカデミー会員に選ばれた。終生、美学を哲学の自律的一分野として確立することに努力を払い、『美学の将来』L'Avenir de l'esthétique(1929)では、芸術を物をつくる営為、美学を形の学として規定し、のちには独自の創造概念instaurationを提起、この「形の創造」の観点より技術美を積極的に評価し、映画美学を推進した。主著『諸芸術の照応』La Correspondance des arts(1943)では比較美学の立場から諸芸術を体系化し、『二十万の劇的状況』Les deux cent mille situations dramatiques(1959)は、劇中人物の機能の組合せによって劇的状況を説明して、構造主義の先駆となった。
[佐々木健一 2015年5月19日]
『エチエンヌ・スリヨ著、古田幸男・池部雅英訳『美学入門』(1974・法政大学出版局)』▽『新田博衛訳『造型芸術における時間』(『芸術哲学の根本問題』所収・1978・晃洋書房)』