改訂新版 世界大百科事典 「セモニデス」の意味・わかりやすい解説
セモニデス
Sēmōnidēs
前7世紀ごろのギリシアの詩人。生没年不詳。サモス島に生まれたが,サモス人のアモルゴス島植民市建設に貢献し,〈アモルゴスの人〉と呼ばれた。イアンボスとエレゲイア調の多数の詩およびエレゲイア調の《サモス史》2巻を書いたが,40余りの断片が伝わるのみである。彼の詩は,同時代の詩人ミムネルモスのように,厭世観を基調とし,人生は苦しみと悲しみの連続であること,希望をもつことのむなしさなどを歌う。他面,ユーモアと風刺の才を示す。118行におよぶイアンボス調の詩はとくに有名である。この詩は,女性のタイプを分類し,それぞれが犬,猫,豚,馬,ロバ,キツネ,猿,ミツバチ,そして海,大地より生じたとする。これらの動物などになぞらえて女性の性(さが)を風刺し,最良のタイプはミツバチから生じた女性であると結論する。この形式は当時流行をみた寓話文学の影響を受けたものである。また,この種の女性誹謗(ひぼう)はヘシオドスのパンドラ神話にその原点をもつ。
執筆者:高橋 通男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報