日本大百科全書(ニッポニカ) 「せり売買」の意味・わかりやすい解説
せり売買
せりばいばい
auction
商品売買方法のうち、1人対多数、もしくは多数対多数の交渉によって売買契約を成立させる方法を競争売買といい、それはさらにせり売買、入札売買、競(きょう)売買に三分される。せり売買は、せり売りとせり買いに分けられ、法律上は競売(けいばい)、競買(けいがい)とよばれる。せり売りは、1人の売り手に対し多数の買い手が口頭で値段をせり上げ、最高の値段を申し込んだ者を買い手とする方法である。せり買いはこれと反対に、1人の買い手に対し多数の売り手が口頭で値段をせり下げ、最低の値段を申し込んだ者を売り手とする方法である。せり売買の最大の特色は、口頭(符丁を含む)で値段を競争しあうことであり、もしこれを文書によって行えば入札売買になる。なお取引所用語としては、競売買はせりともいい、競争売買と同義に用いられる。また、せり売りで、せり売り人が最高値で値段を呼び始め、しだいに呼び値を下げていって、最初に「買う」といった人に売り渡す方法を、オランダ式せり売り(ダッチ・オークション)という。
せり売買は手続が簡単であり、大量の商品を敏速かつ適正な値段で売買することができるから、中央卸売市場などで採用されている。その場合、実際の運営には相当の技術を必要とするから、せりを進行させるせり手には、専門のせり売買人がその任にあたるのが普通である。中央卸売市場の例では、生鮮食料品のせり売買の関係者は、卸売人(売り手)と仲買人(買い手)であり、専門のせり売買人が実際の売買取引をさばくことになる。
[森本三男]