改訂新版 世界大百科事典 「セル構造機械」の意味・わかりやすい解説
セル構造機械 (セルこうぞうきかい)
cellular automaton
同一の構造をもった多数の素子(有限オートマトン)を規則正しく配列し,規則正しく結線した系(自動機械)をセル構造機械,セル構造オートマトン,あるいは一様構造機械という。生体の多細胞から成る構造に倣ってセルcell構造と名づけられている。系の配列が一次元のものや二次元のもの,あるいは系が有限個の素子(セル)から成るものや無限個の素子から成るものなど,実際に扱う問題によってさまざまなモデルがある。最も典型的なモデルは,二次元空間を碁盤目状に区切り,各セルが情報を直接交換できる範囲を上下左右の隣接したセルに限定したもので,歴史的にもフォン・ノイマンが自己増殖機械を提案したときに用い,セル構造機械理論の発端となった。
セル構造機械の特徴は,すべてのセルが同時に並列的に動作する点にあり,直接の情報交換の範囲は限られているが空間的に広がった多くの情報を短時間で処理するのに適していることである。理論的には1960年代から70年代にかけて盛んに研究された。とくに言語や図形の認識能力,数の高速計算の能力などの研究,系全体の状態遷移の解析,さらには特定の与えられた情報を処理する系の設計などがなされた。またセル構造機械が,例えば二次元空間を規則正しく区分した系であるので,物理学や他の自然現象を扱う分野での数値解析やシミュレーションの道具としても応用されはじめた。さらに最近の集積回路技術の発展につれて,並列処理計算機の設計技術との関係も深まってきた。
執筆者:西尾 英之助
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報