日本大百科全書(ニッポニカ) 「コクゾウムシ」の意味・わかりやすい解説
コクゾウムシ
こくぞうむし / 穀象虫
[学] Sitophilus zeamais
昆虫綱甲虫目オサゾウムシ科に属する昆虫。世界各地に分布している貯蔵穀類の害虫であるが、とくに貯蔵米(まい)に多く、日本ではもっとも多い種である。体長2.3~3.5ミリメートル。体は細く、黒褐色ないし赤褐色、上ばねの肩部と後方に鈍い赤紋がある。口吻(こうふん)は長く前方へ突き出し、雌では光沢があってすこし下方に反るが、雄では隆起線と点刻があって光沢がない。前胸は密に点刻があり、上ばねには各数点の刻列と列間の隆起線がある。
雌は穀粒に穴をあけて産卵し、幼虫は白くて太った柔らかい虫で、穀粒の内部を食べて育つ。1世代は盛夏のころで約1か月であり、年4回ぐらい発生し、大部分は成虫で越冬する。暖地では野外でもみられ、枯れ木の皮下の分解した部分などにいることもある。以前はヨーロッパに多いココクゾウの学名を誤ってあてていたが、この種はインドから記載されたものであることが判明した。
ココクゾウS. oryzaeも米穀に多い種で、コクゾウムシによく似ているので区別がむずかしいが、体長2ミリメートル余りでやや小さく、褐色ないし赤褐色で上ばねの紋がなく、おもに幼虫で越冬し、コクゾウムシより湿気のあるほうを好むなどの違いがある。ヨーロッパでrice weevilとして害虫書などにあげられているのはこの種である。もう1種、米穀にみられる同属種として、褐色で光沢のあるグラナリアコクゾウS. granariusがあり、体長3~3.5ミリメートル、前胸背面の点刻は縦に長く、上ばねには深い縦の条溝がある。この種は後ろばねが退化していて飛べないが、壁面に止まるときの肢(あし)の粘着力は強く、貯蔵穀類中での生活にはより適応していると思われる。日本では1923年(大正12)にカナダから輸入された加州米で初めて発見されたが、一般には広がっておらず、定着してはいないようである。
[中根猛彦]