ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タオ」の意味・わかりやすい解説
タオ
Tao, Terence
オーストラリアの数学者。サウスオーストラリア州のフリンダーズ大学で修士号を取得し,1996年にアメリカ合衆国のプリンストン大学で博士号取得。その後カリフォルニア大学ロサンゼルス校で教鞭をとる。2006年,スペインのマドリードで開催された国際数学者会議で,偏微分方程式,組合せ論,調和解析,加法的整数論に関する業績によりフィールズ賞を受賞した。2000年にはサレム賞を,2002年にはアメリカ数学会ボッチャー記念賞を受賞している。研究領域は多分野にわたっているが,主要分野は数理物理学における偏微分方程式論である。タオは,非線形シュレーディンガー方程式(→シュレーディンガーの波動方程式)について解の存在に関する決定的な成果をもたらした。また,アルバート・アインシュタインの一般相対性理論で予見されている重力波についても重要な業績を上げている。2004年には,イギリスの数学者ベン・グリーンとの共同研究で,素数からなる任意の長さの等差数列が存在することを証明した(たとえば,107,137,167,197,227,257は,公差が 30の素数からなる等差数列)。従来は素数からなる等差数列は,それほど長くはなりえないのではないかと考えられていたこともあり,この結果は数論における著しい貢献である。
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