フィールズ賞(読み)ふぃーるずしょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フィールズ賞」の意味・わかりやすい解説

フィールズ賞
ふぃーるずしょう

数学におけるノーベル賞ともいうべき国際的な賞。その名称は、この賞を設けることを提案したカナダトロント大学の数学科教授であったフィールズJohn Charles Fields(1863―1932)にちなむ。フィールズはトロントでの第7回国際数学者会議(1924)の開催に尽力したが、その後、「数学のために著しい貢献をした数学者に対して金メダルを贈る」「その賞は世界の数学者を対象とし、過去の業績に対する表彰ばかりでなく、それ以後研究に対する奨励でもある」という提案を行った。この提案は、フィールズが死去した1932年の第9回国際数学者会議で受け入れられた。第1回の受賞者は第10回国際数学者会議(1936)でのアールフォルスとダグラスJesse Douglas(1897―1965)で、以後は4年ごとに開かれる国際数学者会議で授与されることになっていた。しかし第二次世界大戦のために中断し、1950年に第2回の授与となった。1962年までは受賞者の数は2人であったが、1964年からは2人以上、4人以下となり、受賞者の年齢は原則として40歳までとされる。

 受賞者のなかには、カタストロフィー理論の創設者R・トム(1958年受賞)、代数幾何学革命をもたらしたグロタンディエク(1966年受賞)、ポアンカレ予想を解いたスメールStephen Smale(1966年受賞。1930― )らがおり、日本の数学者では1954年(昭和29)に調和積分論の研究で小平邦彦(こだいらくにひこ)、1970年に代数幾何学の研究で広中平祐(へいすけ)、1990年(平成2)には森重文(しげふみ)が受賞している。

栗原 裕]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フィールズ賞」の意味・わかりやすい解説

フィールズ賞
フィールズしょう
Fields Medal

数学の分野で著しい業績を上げた研究者に贈られる賞。正式名称は International Medal for Outstanding Discoveries in Mathematics。しばしば数学のノーベル賞と称される。4年に 1度開かれる国際数学者会議 ICMの際,40歳以下の数学者 2~4人に授与される。1924年カナダのトロントで開かれた国際数学者会議で議長を務めたトロント大学数学科教授ジョン・チャールズ・フィールズ(1863~1932)が,会議運営資金の余剰金を元に創設することを提唱。のちにフィールズの遺産が寄贈されたことから,本人の意に反してフィールズ賞の名で知られることになった。1936年に最初のフィールズ賞が 2人に授与され,1966年から受賞者数が増やされた。受賞者にはメダルと報奨金が贈られる。国際数学連合 IMUの執行委員会が選考委員を任命し,各国の下部組織が候補者を推挙する。日本人の受賞者としては,小平邦彦広中平祐森重文がいる。ICMではフィールズ賞のほかに,1982年から理論計算機科学の分野における傑出した研究に対してネバンリンナ賞が,2006年からは数学研究によって社会に大きな影響を与えた数学者にガウス賞が授与されている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報