たこ部屋(読み)たこべや

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「たこ部屋」の意味・わかりやすい解説

たこ部屋
たこべや

日本資本主義の創成期から 1930年にわたって,炭鉱,金属鉱山,開発土木工事 (道路,築港,鉄道,水力発電など) の部門で行われた奴隷的な過酷な労働制度。創成期の囚人労働の代替物として,主として北海道,樺太 (サハリン) ,東北,北陸,北九州に,また業種によっては全国的に行われた納屋制度。人夫部屋,監獄部屋ともいう。たこ部屋には,囚人の代りに都市,農村の窮民が誘拐まがいの方法で集められ,親方 (管理人) ,帳場,世話やき,棒頭,中飯台,下飯台という序列のもとに,労働と消費の両面で過酷な搾取隷従を強制された。たことは棒頭,中飯台,下飯台の総称で,蛸壺に入ったタコのように再び脱出できないという意味だといわれる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のたこ部屋の言及

【監獄部屋】より

…人身売買的な方法で手にいれた労働者を,特定の居住設備に単身で長期間拘禁して自由を奪い,私生活を含めた全生活管理を行い,囚人労働に等しいやり方で強制労働させ,逃亡には残虐な私刑でむくいる,といった労働者管理のしくみ,またはその居住設備のこと。たこ部屋ともいう。金属鉱山での飯場制度,炭鉱での納屋制度に対して,土建業のものを指す場合と,この3者の総称として批判的価値観を含ませて使う場合とがあるが,総称としては飯場制度の語が一般的である。…

【強制労働】より

…朝鮮から〈官斡旋〉の手段で朝鮮人を強制連行したのはこの一例といえる。また戦前は,土建業や炭鉱のいわゆる〈監獄部屋〉や〈たこ部屋〉,紡績業における〈寄宿舎〉などでは強制労働がかなり行われていた。一貫した強制労働政策の例としては,ナチス・ドイツやスターリン体制下の収容所が挙げられる。…

【飯場制度】より

…ことに労働供給源から遠い作業場等では,かさんだ募集費を取り戻すために1人当りの作業量が自然過大となりがちで,反抗や逃亡に対して暴力ざたが発生することも少なくなかった。飯場に監獄部屋とかたこ部屋等の名称が発生したのはそのためである。ただし,第2次大戦後は労働基準法の施行等もあって,たこ部屋的側面は漸次解消され,また,技術革新のなかで作業監督機能もなくなるなど,飯場制度は現在では大きく変質している。…

※「たこ部屋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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