改訂新版 世界大百科事典 「タヌキアヤメ」の意味・わかりやすい解説
タヌキアヤメ
Philydrum lanuginosum Banks
タヌキアヤメ科の直立性草本。茎は高さ50~100cmになり,綿毛をかぶり,上部で多少分枝する。葉は基部が茎を抱くように折りたたまれ,剣状で長さ30cmほどだが,茎の上部になるにしたがい短小となる。茎頂に生じる穂状花序は長さ30~60cm,葉状の苞間に花を単生する。花被は黄色,外側の2枚は大きく反曲し,内側のものは退化おしべが弁化したもので,先端が裂ける。稔性おしべは1本,子房は上位で1室。九州属島や南西諸島から東南アジア,さらにオーストラリアまで,熱帯から亜熱帯域に広く分布し,水田跡や湿原に生育する。とくに利用はされないが,単子葉植物のなかでは花被片が2枚で1本のおしべしかない特異な植物で,独立した科とされる。類縁についてもラン科に近いという意見から,イグサ科,トウエンソウ科,あるいはツユクサ科に近いという意見まで,多くの見解が出されている。
執筆者:堀田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報