日本大百科全書(ニッポニカ) 「タバコ・ロード」の意味・わかりやすい解説
タバコ・ロード
たばころーど
Tobacco Road
アメリカの作家コールドウェルの小説。1932年刊。ジョージア州東部の不毛な台地(ここにはタバコの葉を詰めた大樽(おおたる)を転がしてできた道路(ロード)がある)に住む白人貧農ジーター・レスター一家の、無知と貧困による悲惨な狂態ぶりが、辺境の「ほら話」風のユーモアを交えて描かれる。登場人物は物欲と色欲を満たすためには手段を選ばない連中ばかりだが、作者は、新しい機械文明(自動車はその象徴)に追い詰められてゆく南部農民ジーターの、土地への執着から招いた火災による不慮の死を、哀惜を込めて描いている。J・カークランドにより劇化(1933)され、ブロードウェーで長期上演記録を樹立。のちさらにジョン・フォード監督により映画化(1941)された。
[関口 功]
『杉木喬訳『タバコ・ロード』(岩波文庫)』