改訂新版 世界大百科事典 「タビビトノキ」の意味・わかりやすい解説
タビビトノキ
traveler's-tree
Ravenala madagascariensis Gmel.
バショウ科オウギバショウ属Ravenalaの常緑の中高木で,マダガスカルに1種を特産する。直立する木質の茎は高さ20mと大きく,幹も太く,それにバナナに似た長さ2.5mほどの葉身と長い葉柄をもつ葉を,美しく扇を広げたように2列生する。花は白く,仏焰苞(ぶつえんほう)は12枚以上ある。葉鞘(ようしよう)に水がたまり,旅人がこの水で渇をいやしたことからリョジンボク(旅人木)の名がある。またオウギバショウ(扇芭蕉)の名もある。葉姿に優れるため,今日では熱帯各地で公園などによく植えている。しばしば同属とされるものに南アメリカのギアナ,ブラジルに分布するタビビトノキモドキPhenakospermum amazonicum(Mart.)Miq.(=Ravenala guianensis(Rich.)Benth.)がある。全形はよく似ているが,タビビトノキはおしべが6本あり,5本のタビビトノキモドキから別属として区別される。性質その他はバナナやストレリチアによく似る。冬は12℃以上を保ち,つねに日によく当てる。培養土はよく肥えた土をつかい,水を多くあたえる。繁殖はおもに輸入の種子によるが,大株になると子株ができるので,これを割って植える。
執筆者:坂梨 一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報