改訂新版 世界大百科事典 「タンター」の意味・わかりやすい解説
タンター
Ṭanṭā
エジプト北部,ガルビーヤ県の県都。人口37万2893(1996)。ナイル・デルタ地帯の中央部,ロゼッタ支流とディムヤート支流の間に位置する商業都市で,鉄道網や運河の水路網がここを中心に広がっている。13世紀にイスラム神秘主義者(スーフィー)アフマド・アルバダウィーがこの地に住みついて活動し,以後タンターは彼を創設者とするアフマディー教団の根拠地となった。彼が葬られた墓の上には,モスクが建てられ,下エジプト最大のスーフィーの聖地として多くの参詣者を集めた。現在でも彼の生誕祭(マウリド)が盛大に催される。またタンターの周辺はエジプト有数の穀倉地帯であるため,農産物の取引が行われ,商業が発達した。その後集荷した綿を加工する紡績や織物業などの軽工業も興り,現在ではマンスーラと並ぶデルタ地帯の中心都市として繁栄している。
執筆者:吉村 作治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報