日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダイナミックスピーカー」の意味・わかりやすい解説
ダイナミックスピーカー
だいなみっくすぴーかー
electrodynamic speaker
一定の強さの磁場の中に動くことのできる導体を置き、この導体に音声電流を流すことにより、導体自身が振動して音を発生する原理を利用したスピーカーの総称。動電型スピーカーともよばれる。ダイナミックスピーカーの代表的なものにムービングコイルスピーカー(または動コイルスピーカー)がある。円筒状の磁気空隙(くうげき)の中に、円筒の軸方向に動くことができるように音声コイル(ボイスコイル)をつるし、コイルにはコーン形またはドーム形の振動板を機械的に連結する。音声コイルに音声電流を流すと、磁場と電流との相互作用によってコイルを上下方向に振動させようとする力が生じ、その結果、コイルとそれに連結された振動板が振動して音波を放射する。ムービングコイルスピーカーは、動作原理上ひずみがなく、大きな音響エネルギーを扱うことができる。
また低周波から高周波までオーディオ周波数の全域にわたって、良好な特性を示すなど、優れた特徴をもっている。このため、現在用いられているスピーカーのほとんどが、この形式のもので占められている。
ダイナミックスピーカーには、このほかリボンスピーカーなどがある。リボンスピーカーは、磁場の中に薄くて軽い金属製のリボンをつるし、このリボンに音声電流を流すことによりリボンを振動させて、これから直接音を放射させるものである。リボンスピーカーは大きな音響エネルギーを扱うには向かないが、高い周波数でよい特性を増すので、高音用スピーカーとして用いられることがある。
[吉川昭吉郎]