改訂新版 世界大百科事典 「チチブ」の意味・わかりやすい解説
チチブ (知知武)
dusky tripletooth goby
Tridentiger obscurus obscurus
スズキ目ハゼ科の魚。北海道南部から沖縄にかけて広く分布し,高知でゴリ,東京でダボハゼ,霞ヶ浦でクロゴロなどの地方名がある。汽水域から淡水域にかけて生息する。全体に暗褐色でほおの部分には淡白色の小点が散在する。胸びれの基部に白い横線が目だつ。第1背びれの6本の棘(きよく)は糸状にのびる。産卵期には全体の色彩が鮮やかになる。産卵期は土佐で2~3月,霞ヶ浦で5~8月である。卵は粘着卵で長径1.2~1.4mm,短径0.65~0.75mmでセイヨウナシ型をしている。下面の平らな石,あるいは木片などの下部に隙間をつくり産みつける。産卵数は約2000から1万個で,雄が卵を保護する習性がある。水温20℃前後において約10日ほどで孵化(ふか)し,しばらく浮遊生活を送ったのち,全長約11mmを超えると底生生活に移る。寿命は1年でまれに2年にわたるものがある。全長13cmになるものもあり,汽水域にいるものはよく肥満して美味である。つくだ煮材料として用いられる。
執筆者:松下 克己
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報