ツノザメ

改訂新版 世界大百科事典 「ツノザメ」の意味・わかりやすい解説

ツノザメ (角鮫)

ツノザメ目ツノザメ科ツノザメ属Squalusに属する海産魚の総称。ツノザメの名は背びれの前縁に太いとげがあることに由来する。九州ではケンノオソケンブカなどという。英名はspiny dogfishでとげの存在を強調している。日本近海には5種のツノザメ類がいる。

 なかでもアブラツノザメS.acanthiasは全世界の温帯から寒帯にかけて生息し,もっとも分布域が広い。日本近海では太平洋岸は銚子以北,日本海側は山陰以北に分布する。体側に白点があるのが特徴で,全長1.5m近くに達する。フトツノザメS.mitsukurii三陸から九州に至る大陸棚から大陸斜面にかけて分布する。その名のとおり体型がどっしりしていて,全長1.5m近くになる。トガリツノザメS.japonicusは本州中部以南から台湾にかけて分布する。吻(ふん)がきわめて長いのが特徴で,全長1.2mほどになる。ヒレタカツノザメS.blainvilleiは九州西岸の大陸棚に分布する。第1背びれが高いのが特徴で,全長1.2mになる。ツマリツノザメS.brevirostrisは本州中部以南台湾にまで分布する。吻が短いのが特徴で,全長60cmになる。

 すべて底層性であるが,遊泳力は強く,アブラツノザメは太平洋を横断する。卵胎生で,胎児数は多くても十数尾。妊娠期間はアブラツノザメが22ヵ月,トガリツノザメやツマリツノザメは10~12ヵ月である。魚類頭足類主食とする。トロールや底はえなわ,一本釣りで漁獲される。アブラツノザメは日本や北欧では重要な漁業対象魚。焼魚,煮魚になるほか,練製品の原料ともなる。
サメ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツノザメ」の意味・わかりやすい解説

ツノザメ
つのざめ / 角鮫

軟骨魚綱ツノザメ目の科や属の総称。ツノザメ科Squalidae(英名dogfish sharks)は2基の背びれの前にそれぞれ1本の強い棘(とげ)を有すること、臀(しり)びれがないこと、尾びれの先端付近に欠刻(切れ込み)がなく、尾びれ上葉が全体に丸いことなどが特徴である。同科はヒゲツノザメ属Cirrhigaleusとツノザメ属Squalusの2属からなり、ヒゲツノザメ属は鼻孔の前の弁状部が長く伸びるが、ツノザメ属では伸びないことで区別できる。世界にヒゲツノザメ属は3種、ツノザメ属は約30種が知られ、日本近海にはヒゲツノザメ属にヒゲツノザメC. barbiferのみが、ツノザメ属にアブラツノザメ、ツマリツノザメ、トガリツノザメS. japonicusなど5種が分布する。生殖方法は卵黄依存型の胎生である。

[仲谷一宏 2021年10月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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