ティマール制(読み)てぃまーるせい(その他表記)Timār

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ティマール制」の意味・わかりやすい解説

ティマール制
てぃまーるせい
Timār

オスマン帝国の軍事封土制。その起源はアラブイクター制ビザンティン帝国プロノイア制などに求められる。オスマン帝国では、征服した領土を兵士に分与し、そこから得られる租税を給与のかわりに徴収させた。この土地をディルリク生計の意)といい、封土は収入に応じて、大きい順に、ハス(年間収入10万アクチェ以上。アクチェは貨幣単位)、ゼアメット(年間収入2万~10万アクチェ)、ティマール(年間収入3000~2万アクチェ)に分けられた。封土の大部分はティマールで、その保有者スィパーヒーは「ジェベリ」とよばれる完全武装の従者を養成し、戦時には自ら出征することが義務づけられた。平時、スィパーヒーは封土の近くに居住し、農業生産管理と治安の維持にあたった。16世紀末以後、東西貿易路の転換、人口増加、インフレ徴税請負制普及などを契機としてこの制度は崩れ始め、その軍事的、社会的機能は喪失し、19世紀中ごろに廃止された。

[永田雄三]

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ティマール制」の解説

ティマール制(ティマールせい)
timār

オスマン帝国の軍事封土制。土地国有の原則にもとづき,その徴税権がスルタンからシパーヒー(騎士)にティマール(封土)として与えられた。シパーヒーは見返りに収入に応じて軍事奉仕を行う義務を負った。国家は彼らが封建領主化するのを避けるため,世襲を認めず頻繁に配置換えを行い,行政・裁判権も与えなかった。17世紀以降徴税請負制の普及で制度は崩壊した。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

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