プロノイア制(読み)ぷろのいあせい(その他表記)Pronoia ギリシア語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「プロノイア制」の意味・わかりやすい解説

プロノイア制
ぷろのいあせい
Pronoia ギリシア語

ビザンティン帝国における土地媒体にした皇帝臣下の主従関係をさし、その制度は西ヨーロッパの封建制度に似ている。プロノイアとは元来は管理、保護、摂理を意味するが、制度としてはコンスタンティヌス9世(在位1042~55)の治下初めて登場する。すなわち、皇帝が一定の奉仕や仕事に対し、給料のかわりに高級軍人や官吏に国有地の管理権とその土地からの全収入を与えるというものである。当初その移管は一代限りであり、売却も遺産相続も認められなかった。アレクシオス1世(在位1081~1118)のとき、これに軍事的性格が加わり、軍務につくことを条件に大量のプロノイアが下賜された。受給された土地の大小に応じ受給者はそれぞれ定められた数の部下を率いて参戦した。これによりプロノイア受給者の層が大幅に拡大した。そしてマヌエル1世(在位1143~80)のとき、皇帝から下賜されたプロノイア受給地は、元老院議員および他のプロノイア受給者には売却してもよいことになった。さらにミハイル8世(在位1259~82)のときプロノイア受給地の世襲が認められるに及んで、この制度は西ヨーロッパの封建制度にきわめてよく似たものとなった。国内では大小のプロノイア受給者たちが土地とこれに付随する小作人を所有し、いわば国家のなかの国家を形成した。この制度は、従来の皇帝を頂点とする中央集権制度を大きく崩し、帝国衰微の一因ともなった。

和田 廣]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

旺文社世界史事典 三訂版 「プロノイア制」の解説

プロノイア制
プロノイアせい
Pronoia

ビザンツ帝国における11世紀以降の土地制度
アレクシオス1世が軍事奉仕の代償として豪族に一定の土地を給付し,土地および住民に対する全面的支配権を認めたことに始まる。のちに世襲も認められるようになり,この結果,社会の封建化が促進され,皇帝の支配力は衰退した。

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