日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ティンバーゲン(Niko (Nikolaas) Tinbergen)
てぃんばーげん
Niko (Nikolaas) Tinbergen
(1907―1988)
オランダ、ハーグ生まれの動物学者。1947年ライデン大学教授、その後イギリスのオックスフォード大学で動物行動学を教え(1949)、のち同大学教授となる(1966)。初期にはアジサシ、ジガバチの行動を研究した。1938年、K・ローレンツが彼を共同研究者に招いたことが、エソロジーの誕生につながった。二人は抱卵中のカモが転がり出た卵を引き戻す行動を、種々のモデル卵を使って実験した。1973年、二人はK・フォン・フリッシュとともに、「個体行動および社会的行動の様式の組織化と誘発に関する発見」によりノーベル医学生理学賞を受賞した。彼の研究の特色は、動物には影響を与えずに簡単でしかも巧妙な野外実験をくふうする才能であろう。たとえば、カモメの親鳥の種々の模型をつくって雛(ひな)の餌(えさ)ねだり行動を調べ、生得的解発機構を分析した。研究対象は幅広く、ほかにジャノメチョウ、トゲウオなどがある。晩年では人間の子供の自閉症の研究に取り組んでいた。兄のヤンは1969年にノーベル経済学賞を受賞している。
[川道武男]
『ティンバーゲン著、丘直通訳『動物の行動』(1969・タイム・ライフ社)』▽『ティンバーゲン著、永野為武訳『本能の研究――1969年版』(1975・三共出版)』▽『ティンバーゲン著、阿部直哉・斎藤隆史訳『好奇心の旺盛なナチュラリスト』(1980・思索社)』