改訂新版 世界大百科事典 「テラマーレ文化」の意味・わかりやすい解説
テラマーレ文化 (テラマーレぶんか)
イタリア北部ポー川流域,とくにエミリア地方に広まった青銅器時代中期,後期の文化。この地方の低湿地帯を覆う〈肥沃な黒色土〉(テラマーレterramareまたはテラマルナ)を包含層とするためこの名称があり,テラマリコラ文化ともいう。中期前半の集落は土塁や濠(ほり)をめぐらせていないが,後半から防衛施設を有し,杭上住居も多く見られる。青銅製の斧,留め針,両刃のかみそり,それに小型の彫像が出土し,土器は灰色もしくは黒色の研磨土器で,同心円文などの幾何学形沈線文,いぼ状突起,角(つの)形把手を有している。埋葬法は火葬で,円錐形を二つ組み合わせたような骨壺に盃形の蓋をした。農業・牧畜を経済基盤とし,牛,馬,豚,羊などの飼育,小麦,レンズマメなどの栽培を行った。文化の担い手は,ドナウ川流域からの移住者であり,鉄器時代初期にアペニノ文化に吸収される。
執筆者:青柳 正規
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報