日本大百科全書(ニッポニカ) 「テレワーク」の意味・わかりやすい解説
テレワーク
てれわーく
telework
telecommuting
remote work
パソコン、スマートフォン、インターネットなどの情報通信技術(ICT)を活用し、勤務先以外で仕事をする柔軟な勤務形態。ギリシア語に由来する「遠い(tele)」と英語の「働く(work)」を組み合わせた造語で、リモートワークなどともよばれる。テレワークは、(1)勤務先と同じ労働や副業などを自宅で行う在宅勤務(在宅ワーク)、(2)駅、喫茶店や、移動中の交通機関などでのモバイルワーク、(3)勤務先以外の共用事務所、コワーキングスペース、レンタルオフィスなどで働くサテライトオフィス勤務、の三つの働き方に大別される。事業所のペーパーレス化、省電力、通勤時間や交通費の削減につながり、女性・障害者・遠距離居住者らの離職防止や雇用機会の拡大に役だち、勤務時間も柔軟に設定できるため、ワーク・ライフ・バランスを実現しやすい。また渋滞や環境負担を軽減する効果をもち、大災害や感染症流行時でも事業継続性を確保しやすいという利点もある。一方で、サイバー攻撃による情報漏洩(ろうえい)や不正アクセスなどのリスクが避けられず、ネット経由のため細かな意思疎通がしにくく、適切な労務管理や人事評価に対する不安もある。
テレワークは1970年代、アメリカのロサンゼルスで渋滞や大気汚染が社会問題化したことを機に、新たな勤労形態として生まれたとされる。日本では、1984年(昭和59)に日本電気(NEC)が東京・吉祥寺(きちじょうじ)にサテライトオフィスを設置したのが草分けとされ、バブル経済期前後から、ICTを活用して小オフィスや自宅でビジネスを行うSOHO(ソーホー)がもてはやされた。総務省の2019年(令和1)の調査ではテレワークの導入企業割合は19.1%にとどまっていたが、新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の流行を機に、一気に導入機運が高まり、内閣府の2020年5~6月の調査では就業者の34.6%がテレワークを経験した。国は「コロナ禍」に加え、東京オリンピック・パラリンピック時の混雑緩和や働き方改革の一環としてテレワーク導入を支援しており、とくに導入が遅れぎみの中小企業に対する助成金や導入マニュアルの配布で、システム整備や情報セキュリティー対策を促している。
[矢野 武 2020年11月13日]