改訂新版 世界大百科事典 「テーナイト」の意味・わかりやすい解説
テーナイト
taenite
鉄隕石を構成するニッケル-鉄合金のうち,Ni含有量30~60%の金属相に相当し,冶金学的にはγ相の鉄(面心立方格子)にあたる。鉄隕石のほかに石質隕石,石鉄隕石中にも存在するが,強い還元状態で晶出したものと考えられる。モース硬度5で,へき開なし。鋼灰~灰白色,不透明,研磨面では白色。等方性。反射多色性,異方性ともになく,(111)の双晶存在。オクタヘドライト中に見られるウィドマンシュテッテン構造中では薄層をなして存在する。この場合,薄層の組成は不均質で中心部はNiが20%程度であるのに対し,カマサイトと接する両端部では急激に上昇して30%以上となることが多い。Ni>14%のアタキサイト中では一般にテーナイトのみからなる。金,白金などの漂砂鉱床できわめて少量がまれに産出する以外は天然での産出は知られていない。
→鉄隕石
執筆者:松枝 大治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報