隕石のうち鉄・ニッケル合金を主体とするものをいい、地球に降下する隕石の5.7%を占める。隕鉄は、その微量成分元素組成に基づいて15グループに細分類されている。この多様性は、金属鉄が原始太陽系の中で、凝縮、集積、溶融、再結晶などの諸過程をたどって進化するとき、その途中の段階で進化が止まったために生じたものである。たとえば、隕鉄の2%を占める少数グループは、ガスから凝縮したまま凍結した組成を示す。26%を占める別のグループは、集積して小天体を形成したが、コアを形成するには至らず、小天体内部に、ぶどうパンの中の干しぶどうのように、分散したまま凍結した組成を示す。残り72%の多数グループは、これらの諸過程をすべて経由した組成を示しているので、小天体のコアを形成していたといえる。これらの小天体の大きさは、隕鉄中のニッケルの分布状態からみて、半径数十~300キロメートル程度で大小さまざまであった。ちなみに、1890年(明治23)富山県中新川(なかにいかわ)郡上市町(旧白萩(しらはぎ)村)で発見された隕鉄は、典型的なコア隕鉄である。榎本武揚(えのもとたけあき)は、刀工国宗(くにむね)に命じてこの隕鉄塊(22.7キログラム)から「流星刀」をつくらせ、皇太子(大正天皇)に献上したと伝えられている。
[小沼直樹]
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…人類が金属の使用を開始した時期は非常に古く,前5000年ころのエジプトですでに金と銅の使用が知られている。金属のうち金,銀,銅,隕鉄は最も早くから人類が採取した自然金属で,はじめは天然の状態のものを打ったり切ったりして使用していたが,やがて冶金技術が発達すると同時に鋳造技術もおこり,銅,錫(すず),鉛,アンチモンなどが鉱石から採取されるようになり,青銅,白銅など銅合金が作られるようになった。青銅はメソポタミアでは前3000年ころ,中国では前2000年ころにすでに行われており,武器,祭器,装身具などが作られた。…
…また,イオンとしての鉄は,ある種の酵素(アコニターゼなど)の活性化に必要な因子としても働く。【柳田 充弘】
【製鉄技術史】
[古代オリエント]
鉄の利用の始まりについてこれまで一般に考えられてきたことは,最初の鉄器が隕鉄を加工したものであったということ,製鉄の開始が青銅器に比べて遅かったということである。その理由の一つとして,鉄鉱石から鉄を取り出すために必要な高熱(融点約1540℃)の獲得が古代人にとり長い間技術的に困難であったことが挙げられてきた。…
…隕石の一種。別名隕鉄ともいう。大部分がニッケル・鉄合金(約98.34%)からなり,このほかに少量のシュライバーサイト(Fe,Ni,Co)3P(1.12%),コーエナイトFe3C(0.42%),トロイライトFeS(0.12%)および石墨C(まれにダイヤモンド)を含む。…
…鉄の原料は鉱石や砂鉄の形で地球上の各地に広く産するが,純鉄の融点が1530℃であるため,製錬に高度な技術を要し,道具としての利用は銅よりも遅れた。ただし,鉄原料としては,火山起源の自然鉄や天体起源の隕鉄(いんてつ)などもあり,前者を産出するグリーンランドのエスキモー社会で利用された。また隕鉄の利用は古く,エジプトでは前4千年紀のゲルゼ文化期の装飾用小玉や,中国の殷代の銅鉞(どうえつ)の刃先に使用された鉄は,ニッケル含有量の高いことから隕鉄と判明した。…
※「隕鉄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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