日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
デット・エクイティ・スワップ
でっとえくいてぃすわっぷ
debt equity swap
債務の株式化と訳され、借入金(デット)と資本(エクイティ)との交換(スワップ)を意味する。貸し手の金融機関にとっては、保有債権を原資とした出資であり、過剰な債務により経営悪化に陥った企業を支援する不良債権処理の一種である。
具体的には、金融機関が債権を現物出資し、株式(おもに優先株)に振り替える形態がとられる。企業にとっては、返済義務のある債務が減少し、返済義務のない資本が増加することから、バランスシート(貸借対照表)の面でも自己資本比率の改善が図られる。貸し手としては、従来主流であった債権放棄による救済では、資産が減少することになり、金融機関としての財務健全性が損なわれるほか、経営者にとっては経営責任を問われる懸念もあった。しかし、デット・エクイティ・スワップでは、債権はなくなるものの相手企業の株式を入手することで資産の減少を免れるというメリットがある。また、もし企業再生が実現し保有株式が値上がりすれば、株式の売却益を手にすることで、貸倒れによる損失を回避できる可能性もある。
その半面、不良債権の表面化を避けて損失処理を先送りすることでもあるので、2006年(平成18)施行の「会社法」においては、債権の時価に応じたデット・エクイティ・スワップしか認められないなどの歯止めもかけられている。
[高橋 元]