デジタル大辞泉
「再生」の意味・読み・例文・類語
さい‐せい【再生】
[名](スル)
1 衰え、または死にかかっていたものが生き返ること。蘇生。「汚染していた川がやっと再生した」
2 心を改めて正しい生活に入ること。更生。「再生の道を歩む」「再生の恩人」
3 再びこの世に生まれること。再誕。
4 廃物を加工して、再び同種のものをつくり出すこと。「再生紙」
5 録音・録画したテープやディスクを装置にかけ、もとの音声・画像を出すこと。「ビデオを再生する」
6 生体の一部分が失われた場合、その部分が再びつくりだされる現象。トカゲの尾、カニの脚などでみられる。
7 心理学で、過去に学習または経験したものを思い出すこと。→再認
[類語]蘇生・復活・起死回生・更生・蘇る・生き返る・回復・回天・再興・中興・復興・復旧・復元・還元・復調・復帰・カムバック・リバイバル・再起・返り咲く・息を吹き返す
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さい‐せい【再生】
- 〘 名詞 〙
- ① 死にかかったものが生きかえること。また、生きかえらせること。絶体絶命の状態から助かること。回生。蘇生。
- [初出の実例]「かく再生(サイセイ)の恩沢を蒙りながら、いかでか一言の礼謝を述ざるべき」(出典:読本・椿説弓張月(1807‐11)後)
- 「僕が先年は教育薫陶の恩になり今回はまた再生の恵に預かる其礼を呉々も述べ」(出典:思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉七)
- [その他の文献]〔通幽記〕
- ② 心を入れかえて新しい生活をすること。「再生の道を歩む」
- ③ 再びこの世に生まれること。再誕。さいしょう。〔文明本節用集(室町中)〕
- [初出の実例]「仮に今日に在て弘法大師を再生せしめ」(出典:文明論之概略(1875)〈福沢諭吉〉三)
- ④ キリスト教の信仰で、人間が、神の恵みにより、霊的に新しく生まれかわることをいう。新生。
- ⑤ 廃物を加工、工夫して再び使えるように作ること。再製。
- [初出の実例]「修理の利くものと再生できるものと廃品にするものとに分けるのがここの仕事である」(出典:二人の友(1960)〈庄野潤三〉四)
- ⑥ 生物が体の一部を失ったとき、その部分の組織や器官を再びつくりだすこと。その程度は生物の種類、年齢、失われた部分などによって異なり、一般に下等な種類ほどその能力が強い。
- [初出の実例]「いなめるには新陳代謝なきを以て、一たび損ずれば滋養もこれを快復せず、妙薬もこれを再生せず」(出典:日本読本(1887)〈新保磐次〉六)
- ⑦ 過去のもの、失われたものなどをよみがえらせたり、それらがよみがえったりすること。また、特に心理学で、過去の経験や学習したものを再現すること。再認の意識の伴わない場合も、心像として固定しない場合も含む。
- [初出の実例]「決して其再生の見込はあらざるなり」(出典:将来之日本(1886)〈徳富蘇峰〉一三)
- ⑧ 録音、録画した音声、映像などをレコードやテープなどからとり出すこと。
- [初出の実例]「テープコーダーがもち出されてテープの再生がおこなわれた」(出典:解体の日暮れ(1966)〈杉浦明平〉)
さい‐しょう‥シャウ【再生】
- 〘 名詞 〙 再びこの世に生まれてくること。さいせい。
- [初出の実例]「若又神功皇后令二再生一、令レ擁二護我国皇基一給歟云々」(出典:吾妻鏡‐嘉祿元年(1225)七月八日)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
再生
さいせい
生物が体の一部をなんらかの理由によって損壊されたときに、失った部分を修復し1個体としての生活を可能にする現象をいう。しかし、ヒトの皮膚の切り傷のように体のごく小さな部分が修復される場合は、損傷治癒または癒傷とよび、体の大きな部分の修復を意味する再生と区別することが多い。また、海綿の解離細胞による個体の新生は再構築といい、再生とはいちおう区別されている。
[竹内重夫]
シカの角(つの)の脱落のように、体の部分の損壊がその個体の生理的事情に基づく場合の再生を生理的再生とよぶ。鳥の換羽、ヒトの毛髪の抜け替わりなどもこの類に属する。これに対し、偶発的原因による損傷の補修を外傷的再生(病理的再生)とよぶ。外傷的再生はさらに、損傷部分の形態修復が周辺の細胞だけの再編成によって行われる形態調整と、傷周辺で分裂増殖した未分化な細胞群によって行われる真再生とに分けて考えられることがある。ヒドラの再生は前者の、プラナリアの再生、イモリの肢(あし)の再生は後者の典型的な例とされる。
[竹内重夫]
傷が加えられたとき、その大小にかかわらず、まず血液あるいは体液の凝固による一時的な傷口の閉鎖に続いて、傷周辺からの上皮細胞の移動(脊椎(せきつい)動物一般)と、傷周辺での細胞分裂の増加、あるいは未分化な細胞の傷口への移動(プラナリアその他)などにより永続的に傷口が閉鎖される。これにより、水の逸失など内部環境の乱れ、あるいは外からの細菌など異物の侵襲による組織のそれ以上の破壊を防ぐ。傷口の閉鎖と同時に損傷の修復が進められる。傷周辺の毛細血管が拡充して透過性が高まり養分が与えられるとともに、食細胞によって、壊された組織の清掃が続けられ、繊維芽細胞が傷の部分へ移動する。小さい傷ならば、この傷の部分で細胞の分化を含む組織形成が行われ、周囲とつり合いのとれた組織が修復される。この意味で小さい傷の再生の研究は胚(はい)発生時の組織分化の仕組みをも明らかにすると考えられている。一方、イモリの肢の切断など大きな傷の場合、傷口の閉鎖ののち、ここに未分化な細胞が集まり増殖して再生芽をつくる。再生芽の細胞集団は周囲の組織の影響のもとに、形をつくる場合、基準となる頭~尾、背~腹、内~外という三つの軸に沿って成長し、骨や筋肉などを形成して、体全体とつり合いのとれた肢を再生することになる。したがって、大きな傷の再生の研究は、胚発生をも含めて形態形成の仕組みの理解を助けるとも考えられている。しかし再生芽は既存の体とのつり合いを保った形態形成を行うこと、またイモリの水晶体を除去すると虹彩(こうさい)から水晶体が再生してくる(化生)ことなど、再生に特有な問題も多い。
[竹内重夫]
ヒドラやプラナリアの体には、なにかある物質の濃度や細胞の活動が頭から尾に向かって徐々に減少するという勾配(こうばい)があり、再生はこの勾配が元どおりになるように行われ、その結果、つり合いのとれた体を取り戻すと考えられている。また勾配は、細胞が場所に応じて適切に分化し、調和のとれた再生が行われるための位置情報として利用されるという考え方もある。傷の場所(場)が再生の仕方を決めている例も多い。イモリの前肢の再生芽は、その場では前肢になるが、後肢の場に移植されれば後肢になる。エビの目を深く切り取ると、目のかわりに触角が再生する(異型再生)が、これは目を深く傷つけたため目の再生の場が失われ、再生芽は触角再生の場の指示に従ったものと考えられる。最近、イモリや昆虫の肢が再生するとき、細胞は肢を中心とした極座標によって示される位置情報に従うという主張もなされている。
[竹内重夫]
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再生 (さいせい)
regeneration
なんらかの理由で失われた生物体の部分が,生物自身によって復元される現象。一般に組織化の程度の低いものほど再生能が高い。たとえばアメーバやカサノリなどの単細胞生物の細胞個体は,核を含んでいるかぎり,かなり小さな断片からでも完全な個体を再生する。同様に,海綿動物,腔腸動物,扁形動物,環形動物の仲間には,小さすぎない任意の小片から,その小片の大きさに見合ったサイズの個体を再生するものがみられる。
再生現象は無性生殖とも深いかかわりをもつと考えられ,一般に再生能のすぐれて高い生物は無性生殖能も高い。現に個体を再生できる最も高等な動物である原索動物のホヤにおいても,再生のできる種は自然状態において無性生殖をすることが知られている。また,プラナリアやゴカイの仲間には,自分の体を任意にいくつかの断片に自切し,それぞれの断片から個体を再生させることをもって正常な無性生殖の方法としているものがある。
体の一部から個体全体を修復的に再生する能力は脊椎動物からは失われ,最も再生能の高い両生類でも,四肢や尾,目のレンズなどの器官を再生しうるのみである。もちろん脊椎動物に無性生殖をするものはない。鳥類以上では器官の再生もみられなくなるが,哺乳類に至るまで,筋肉と神経を除くほぼすべての組織において,損傷からの復元が可能である。
以上のような失われた部分を復元する修復再生に対し,生理的再生といわれ,表皮や消化管の粘膜上皮や血球などのように,個体の維持のためにつねに行われている再生の過程がある。この再生様式をとることで知られる最も下等な動物ヒドラでは,口部直下の部域より,内外2層のみの体壁にそって細胞が上下に流れ続けており,上方では触角の先端部,下方では基部の中心に達したものから順に脱落していく。同様の現象が,脊椎動物に至るまで,内外両胚葉の上皮組織に広くみられるということは,生理的再生の過程が多細胞体制の本質に深くかかわるものであることを物語っている。
執筆者:団 まりな
病理学における再生
病的理由により失われた細胞や組織が,残存する同一の細胞や組織の増殖によって,元に復することを再生という。再生には細胞の分裂増殖が不可欠であるから,非分裂細胞である神経細胞からなる脳や横紋筋細胞からできている骨格筋,心臓には,組織損傷が起こっても再生は起こらない。一方,絶えず細胞分裂をして細胞交代を行っている表皮や粘膜あるいは骨髄などの組織では,組織損傷を受けると速やかな再生がみられる。哺乳類では,毛細血管よりも上位の血管にまで及ぶような大きな組織損傷が起こると,機能,形態ともに完全な再生は起こらない。完全な再生は,ごく小さな上皮のみの傷や,壊死(えし)に陥った個所が完全に吸収されて,肉芽組織ができないような小さな結合組織の傷の場合のみ起こる。肝臓の部分切除後の再生といっても,肉眼的形態上の完全な回復は起こらない。
執筆者:山口 和克
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
普及版 字通
「再生」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
再生(生物)【さいせい】
生物体において,失われた体の一部が再度生成される現象。表皮や消化管の粘膜上皮,血球,あるいは換羽や換毛のように日常的に細胞・組織が置き換わる生理的再生と,外的原因による喪失・損傷時の復旧的(外傷性)再生とに大別される。後者の能力は無性生殖能と強い相関をもち,一般に下等な動物ほど高く,同一種では若い個体ほど著しい。アメーバ,プラナリアなどは体の断片から個体全体を再生できるが,脊椎動物ではその能力は失われ,最も再生能力の強い両生類でも,再生できるのは四肢,尾,眼のレンズなどに限られる。鳥類・哺乳(ほにゅう)類では器官の再生は見られないが,筋肉と神経を除くほぼすべての組織は多少とも再生能力をもつ。典型的な場合では傷面に未分化細胞が集結,増殖して再生芽をつくり,これが分化して再生体へと発達する。またミミズ,カニ,トカゲ等自切を行う動物にはすみやかな再生能力を備えるものが多い。
→関連項目ロイブ
再生(電気)【さいせい】
(1)増幅器の出力の一部を入力に加え正帰還(帰還)を行い,増幅度を増大すること。受信機の検波に再生を利用して感度をあげる方式を再生検波というが,帰還量が大きいと発振を起こす。(2)録音,録画したものから,もとの音や画像を取り出すこと。
→関連項目録音
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
再生
さいせい
rebirth
およそ生あるものが,いったん死んだのち再び生き返ることであるが,宗教では,かなり多様な事柄をさす。まず,さまざまな通過儀礼との関連で用いられ,誕生から始る人生の段階のそれぞれが死と再生の過程として理解される。とりわけ成人式や結婚式では,いずれも古い形の生の終りと,新しい形のもとでのよみがえりを示す。また,回心のような強烈な宗教体験を経た人々も,しばしばそれを再生として表現する。パウロ,アウグスチヌス,ルターなどが歴史的に知られている例である。再生はこの世で死んだのち,この世界あるいはなんらかの別の領域で,同じ形ないし何か変った形態で生れ変るとの表象を伴っている。一般に死後の生が第二の生といわれるのはこのためであり,古代インド,ギリシアなどにみられるように,それは輪廻や転生の観念とも結びつくのである。
再生
さいせい
regeneration
生物体が組織や器官に損傷を受けたとき,その部分を修復する過程。動物の再生力には傷口をふさぐ程度のものから,体の一部から全体を修復するものまでいろいろの程度があり,生物の種類,年齢,失われた部分によって異なるが,一般には下等な,若い生物ほど再生力は強い。渦虫類 (プラナリア) や条虫類の仲間,ミミズ類,ヒトデ類などは強い再生力をもつ。両生類ではイモリが再生力が強く,実験によく用いられる。植物では広く認められる。再生の様式には,体の一部が失われたとき,傷口に未分化の細胞が集合し,この再生芽から失った部分をつくる付加形成,残った小部分が形を変え完全に体を再生する形態再編がある。また余分の器官を生じる過剰再生,失った器官と異なる器官を生じる異型再生などがある。
再生
さいせい
reproduction
心理学用語。過去に経験した事物や事象,あるいは動作を再現すること。特に過去の経験を意志的な努力で正確に再現しようとするときには想起という。単なる連想や願望などとの関連で自然に過去の経験が熟知感や親近感を伴いながら再現されることも多い。再認とともに,それによって記憶の有無が確かめられる。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
再生
会社に債務超過や支払不能などが生じるおそれがある場合に行われる自力再建型の手続き。会社更生手続きは、そのままでは破産する株式会社などで再建の見込みがある場合に、破産による企業の解体を避けるために、債権者・株主・従業員等の関係人の利害を調整しつつ会社再建を図る裁判上の制度。「民事再生法」は経営不振の中小企業を早期に救済するため、2000年4月に施行された再建型の倒産処理手続き。株式会社に限らず、有限会社、個人企業、医療法人、学校法人などにも適用できる。
出典 ASCII.jpデジタル用語辞典ASCII.jpデジタル用語辞典について 情報
再生
花崗岩,片麻岩,片岩などの既存の岩石が熔融して,その場で新しいマグマが発生すること[Sederholm : 1907].他に既存の火成岩の再流動化作用をパリンジェネシスと呼ぶことがあり,再熔融した岩石が岩脈となって火成活動の後に再び貫入することがある[Mehnert : 1968].再生作用ともいう.ギリシャ語のpalinは再び,genesisは誕生の意味.
出典 朝倉書店岩石学辞典について 情報
再生
デジタルカメラなどで撮影・保存した静止画・動画などの画像を、背面の 液晶モニター などで視認するために行う動作。ほとんどのデジタルカメラは、撮影後すぐに撮影画像を再生して写り具合を確認することができるし、その操作もボタンひとつだ。
出典 カメラマンWebカメラマン写真用語辞典について 情報
再生
再生とはブランド再生のことをいう。ブランド再生の項参照。
出典 (株)トライベック・ブランド戦略研究所ブランド用語集について 情報
世界大百科事典(旧版)内の再生の言及
【死】より
…ヒトの場合,出生直後の高死亡率が幼少年期にかけて低下し,15歳から25歳にかけて外傷により急激に死亡率が増し,30歳以後は8年ごとに死亡率が倍増する。死は個体の生命維持の面からは内外の環境への不適応とみなすことができるが,集団全体にとっては,一定の生息空間内で限られた資源量をうまく消費して再生産量を最大にするという適応的価値をもつのではないかという見方もある。
[細胞死]
個体の死と同様なことは,多細胞生物の体内での細胞死に関しても見られる。…
【死】より
…ヒトの場合,出生直後の高死亡率が幼少年期にかけて低下し,15歳から25歳にかけて外傷により急激に死亡率が増し,30歳以後は8年ごとに死亡率が倍増する。死は個体の生命維持の面からは内外の環境への不適応とみなすことができるが,集団全体にとっては,一定の生息空間内で限られた資源量をうまく消費して再生産量を最大にするという適応的価値をもつのではないかという見方もある。
[細胞死]
個体の死と同様なことは,多細胞生物の体内での細胞死に関しても見られる。…
【ルネサンス】より
…哲学,文献学,キリスト教学,美術,建築,音楽,演劇,文学,言語学,歴史叙述,政治論,科学,技術などそれぞれの文化領域において,顕著な発展がしるされた。ルネサンスの用語自体は,フランス語で,〈再生〉を表す語に基づく。ここではルネサンスを,次の五つの側面から説き明かす。…
【傷】より
…
[外傷の病理]
(1)局所反応 局所における反応とは損傷部の生体反応のことで,特殊な阻害因子がないかぎり,受傷直後から修復が始まる。表皮,粘膜,末梢神経,骨,肝臓などの限られた臓器組織では,損傷された部分と同じ働きをもつ組織によって修復され(再生),その他の臓器組織では,損傷された部分の働きより劣った働きしかできない組織によって修復される(瘢痕(はんこん)治癒)。修復過程を遅らせる因子には,損傷部自体の問題と全身的な問題とがある。…
【タンパク質(蛋白質)】より
…変性に伴いタンパク質が凝固・沈殿することもまれではない。また,変性したタンパク質を元の環境に戻したときに高次構造と活性が回復することをタンパク質の再生という。塩酸グアニジンなどの強い変性剤中では,二次構造は完全に消失し,合成高分子などに見られるランダムコイルの状態になる。…
※「再生」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」