改訂新版 世界大百科事典 「デュルフェ」の意味・わかりやすい解説
デュルフェ
Honoré d'Urfé
生没年:1567-1625
フランスの小説家。南フランス,フォレ地方の豪族の家に生まれ,教養が高く,特にルネサンスのプラトン主義の影響を受けた。宗教戦争ではカトリックに加担,戦後一時亡命することもあったが,後にアンリ4世の宮廷に出入りした。1607年より小説《アストレAstrée》を発表し始め,ただちに大成功を得た。生前に第3巻まで刊行,死後すぐに第4巻,さらに完結編の第5巻は生前のノートを基に秘書バロが発表した。これはキリスト教導入以前のゴール地方,フォレ地方を背景にして牧童セラドンと羊飼い娘アストレの恋物語を中心に,多くの牧童たちのさまざまな恋のかけひきを描いたもので,人間の魂の高揚,徳の完遂と恋愛とを合致させるべきものとする理想主義を基本とした恋愛論議が語られている。優雅な雰囲気の中で,牧童たちが恋愛の真義を追うこの小説は,17世紀の人々の感受性に決定的な影響を与えたと言われる。
執筆者:福井 芳男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報