データベース消費(読み)でーたべーすしょうひ

知恵蔵 「データベース消費」の解説

データベース消費

主にアニメやゲームなどサブカルチャーを対象にした用語。キャラクターを構成する目、耳、髪型、声、服などの様々な断片の中から、「萌え」を触発するアイテムだけを選択・愛好したり、そこから同人誌やフィギュアなどの二次創作物を紡ぎ出したりするなど、無限な要素や複合物とその総体(データベース)に向かう消費スタイル。従来の「おたく」系の消費行動を表す「物語消費」(評論家・作家の大塚英志が提起)に対し、哲学者・評論家の東浩紀が『動物化するポストモダン』(2001年刊行)の中で、1990年代半ば以降のオタク系の消費志向をこう名づけた。
データベース消費においては、80年代の「機動戦士ガンダム」に代表されるように、作品の深遠なメッセージを内包した「大きな物語」に目は向けられない。ストーリーへの関心も希薄で、キャラクターのデザインや細部の設定が欲求・欲望の対象となる。90年代後半のアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」がデータベース消費の典型で、放映後、ヒロイン綾波レイを主人公にした(または模した)同人コミックやシミュレーションゲームなどが大量に流通した。東によると、こうした消費主体の台頭は決して短期的なものではなく、進歩思想やイデオロギーなどの「大きな物語」を共有化させる圧力が衰退した現代社会(ポストモダン)の性格を反映したものという。データベース消費の大衆化の例として、AKB48(2005年誕生)、ボーカロイド初音ミク(07年誕生)、世界的大ヒットとなった女性向け官能小説『Fifty Shades of Grey』(『Twilight』のFan Fic=ファンによる二次創作、11年刊行)などが挙げられる。

(大迫秀樹 フリー編集者 / 2012年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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