改訂新版 世界大百科事典 「トウエンソウ」の意味・わかりやすい解説
トウエンソウ
Xyris
世界の温暖な地域に約200種が分布するトウエンソウ科の植物。一年草もあるが多くは多年草で,全体はイネ科やカヤツリグサ科植物に似て,短い根茎から線形の葉を根生する。葉間より花茎を出し,その頂端に鱗片状の苞につつまれた花を,頭状の穂状花序に密集してつける。花は通常黄色,まれに白色の種もあり,花弁は3枚で同形。子房は3室で,果実は蒴果(さくか)になる。湿地に多く,ときにはケイ砂質の酸性貧栄養土壌にも生育する陽地性の植物である。ごく一部の種が温室観賞植物として栽植され,またいも状に肥大した根茎を食用に,葉を民間薬として利用したという記録があるが,重要ではない。中国南部やマレーシア地域にはX.pauciflora Willd.(中国名葱草(そうそう))やX.indica L.(中国名黄眼草(おうがんそう))が広く分布する。
トウエンソウ科はトウエンソウ属のほかに南アメリカ産のAbolboda属などを含む単子葉植物の小さな群で,ホシクサ科に近いが,花の構造はホシクサ科ほど特殊化していない。
執筆者:堀田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報