日本大百科全書(ニッポニカ) 「リュージュ」の意味・わかりやすい解説
リュージュ
りゅーじゅ
luge 英語
luge フランス語
選手がそりに背面仰臥(ぎょうが)姿勢(あおむけ)の滑走フォームで乗り込み、足先から氷上コースを滑走し、その速さを競い合う競技。リュージュlugeとは、フランス語で「木製そり」を意味することばである。リュージュ競技は、1964年の第9回冬季オリンピック・インスブルック大会(オーストリア)から正式競技として採用されている。
スタート時は、リュージュそりに座った状態で、反動をつけてスタートハンドル(スタート地点に設置されている握り手)を押し、直後にパドリング(両手で氷上をかく)動作を数度行った後に、すぐさまにあおむけの姿勢をとり、つまさきを伸ばして滑走していく。滑走中も、そのままあおむけの水平姿勢をとり、空気抵抗を少なくするようにして滑り降りる。そりにブレーキや操作用のハンドルはなく、両足で木製のクーヘとよばれる部分(刃をつける土台)の先端を挟み、要所で押し込むように操作しながら滑走する。最高速度は、トラック(競走路)によって違いがあるが、カナダのバンクーバートラックの場合、男子スタート位置からは時速150キロメートル以上にも達する。
一般に体重が重いほうが有利であり、選手は負荷重量とよばれる「おもり」をその体重に応じて装着することが許される。このほか、スタート時のそりの刃の温度計測規定(所定の温度を超えると失格になる)など、さまざまなルールに従って競技が進行される。
そり遊びから発展してきたリュージュ競技には、その使用コースによって、人工凍結コースartificial trackと天然トラックコースnatural trackがある。それぞれに、コース設計や使用するそりなどに違いがみられる。冬季オリンピック大会に採用されているのは、トラックに冷却剤を通すパイピング工事を施した人工凍結コースである。人工凍結コースにおいては、全長1300メートル前後(女子、2人乗りは1000メートル前後)、標高差100メートルほどのコースとなっている。
冬季オリンピック大会では、男子1人乗り、女子1人乗り、2人乗り、チームリレー(団体戦)の種目が行われる。チームリレーは、2014年のソチ大会(ロシア)から採用され、前走者がフィニッシュした直後に次の滑走者がスタートするもので、3台1チームとなって競技する。3台のそりがリレーしていく形式になるので、たいへんスリリングな競技となっている。
[百瀬定雄]